科学が証明!ストレス解消法

仮眠を26分とると仕事のパフォーマンスが34%向上する

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 春眠暁を覚えず――とはよく言ったもの。あまりの心地よさに思わず眠り込んでしまいたくなる、爽やかな季節になりました。仕事中の眠気ほどやっかいなものはないと思いますが、この季節の眠気はあまりに暴力的……。私も、うたたね寸前に陥ることが珍しくありません。

 どうしても眠気に襲われたとき、みなさんはどうされていますか? 栄養ドリンクを飲んで気合を入れる人もいれば、自らを鼓舞して何とか意識を保とうとするつわものもいるでしょう。さまざまな眠気対策があると思うのですが、実は「思い切って昼寝をする」ことが、とても有効であると、科学が実証しています。

「26分の仮眠で、パフォーマンスが睡眠前よりも34%向上する」というNASA(米航空宇宙局)の研究(1995年)があります。いわゆる“睡魔”とは、記憶、思考などをつかさどる脳の「大脳皮質」が疲弊することで生じるため、いかにして大脳皮質を瞬間的に回復させるかがポイントになります。

 そこで、NASAの研究者らは、飛行機のパイロットたちにコックピットで仮眠をとらせる実験を行いました。すると、彼らの能力は睡眠前に比べ、平均26分の睡眠をとったときにパフォーマンスが最も向上するという結果が出たのです。向上率は、じつに34%。30分足らずの仮眠でこれだけの数値を叩き出したのだから驚きです。

 着目すべきは昼寝は昼寝でも“短期的な昼寝”であった点。この実験では、30分以上寝ると生産性が落ちることも実証されています。寝た分だけ回復するわけではないんですね。

 たとえば、1時間の昼休みがあるなら、30分は食事の時間に充て、30分弱の仮眠をとってみる。それによって午後からの仕事に支障をきたす可能性は低くなり、さらには仕事の向上が見込めるのです。また、目を閉じるだけで脳はリラックス効果のあるアルファ波が出るため、「疲れたな」と思ったら5分ほど目を閉じるだけでも効果はあります。

“寝ないで頑張る”という精神論に美徳を感じる方もいるかもしれませんが、積極的に昼寝を取り入れていった方が心身に◎。カリフォルニア大学バークレー校の研究(2011年)によると、同じレベルの学力を持つ被験者たちに記憶力テストを行ったところ、「寝ないグループ」より「昼寝グループ」のほうが成績が良かったという結果も出ているほどです。“覚醒させるための昼寝”を取り入れる方が、仕事を積極的にはかどらせるためには大事なのです。

 また、昼寝は健康面においても重要性が説かれていて、ギリシャのアテネ大学の調査(2007年)では、成人を対象に30分間の昼寝を週に3回以上とっている人は、心臓病死のリスクが約37%低下することも明らかになったそうです。この数字を聞いて、目が覚めた人も多いのでは?

 昼寝と聞くと、日本人は良いイメージを持たない人が多いですが、スペインではシエスタといって習慣になっているほど。冴えさせるためにあえて寝ることが大切なのです。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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