コロナワクチンの職域接種が始まり、「不妊治療中にコロナワクチンを受けていいですか?」と質問される患者さんが増えています。中には、「コロナワクチンを打つと不妊になるとSNSで話題になっています」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいますが、これはまったくのデマです。
コロナワクチンが不妊につながるという科学的データはありません。女性の場合はコロナウイルスに感染しても卵巣機能に影響を及ぼすとの報告はありませんが、男性の場合はコロナウイルスに感染すると一時的に精子が減少し、男性不妊となる可能性があると報告されています。「妊娠したい」と考えたら、男性も女性も安心して早めにコロナワクチンを打ちましょう。
不妊治療中にワクチンを接種することに関して、米国生殖医学会(ASRM)は積極的に接種することを推奨しています。ですので、機会があれば治療の段階に関わらずできるだけ早めにワクチンを打ちましょう。
ただ、採卵や移植、人工授精など外来手術の予定がある場合、その時期にワクチンを打つこと自体に問題はありませんが、副反応により発熱する場合があります。発熱してしまうと処置を受けることが困難となる場合もあります。
また、副反応が出るのはほとんど接種後3日以内であり、処置後3日間は処置による影響(術後感染など)か、副反応による症状なのか判断が難しくなってしまいます。これを踏まえ、手術・処置の前後3日間だけはワクチン接種を避けた方が望ましいとされています。また、風疹や麻疹のワクチンとは異なり、接種後も避妊期間はなく、治療を継続して大丈夫です。
■妊娠中のワクチン接種は問題ない?
妊娠中にコロナウイルスに感染した場合、妊娠していない女性と比較すると、人工呼吸器が必要になる確率が上昇し、死亡リスクも高まる、早産のリスクが高まると報告されています。したがって、妊婦さんに対しても積極的にコロナワクチンを接種することが推奨されています。日本産科婦人科学会と日本産婦人科感染症学会が共同で声明を出し、コロナワクチンの接種はメリットがリスクを上回るとし、ワクチン接種を推奨しています。
ただ、当初は器官形成期である12週未満は避けるようにとしていましたが、6月17日に出された最新の声明では「海外の報告からコロナワクチン接種は妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守る」としています。
現在、SNSを始め情報が氾濫し、何が正しい情報なのか分かりにくい状況が生まれています。迷った場合は厚労省などの公的機関や学会の声明など信憑性の高い情報にアクセスすることをお勧めします。
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