女性の不妊治療で何が行われているのか

不妊治療はいくらかかるのか? 高額費用が必要な治療の実態

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 お子さんを希望しているもののなかなか妊娠せず、不妊治療を開始して人工授精、体外受精へと治療を進めたAさんご夫婦は、「検査や治療費などで1人妊娠するまでに100万円以上かかりました」といいます。

 日本では公的医療保険制度の下、病気にかかった場合、そのほとんどの費用は医療保険が適用され、全費用の一部を負担するだけで医療が受けられています。ところが不妊治療では、タイミング指導や不妊スクリーニング検査など医療保険が適用される部分はごくわずかで、人工授精や体外受精は自費診療、すなわち患者さんの全額負担となるのです。

 では、実際に不妊治療にはいくらかかるのでしょう? 昨年、厚生労働省の「子ども・子育て支援推進調査研究事業」の一貫として、不妊治療を行っている全国の医療機関に対してアンケート調査が行われました。その中で治療にかかる実際の費用が明らかとなり、自費診療である不妊治療費は施設によって非常に差があることが分かりました。

 人工授精は5000円から5万円以上と施設によりまちまちで、体外受精も安いところでは20万円、高いと90万円を超えていました。平均すると、多くの医療機関が1回の体外受精にかかる料金を約50万円に設定していることが分かりました。

■高額な体外受精による不妊治療には助成金がある

 高額な費用のかかる体外受精による不妊治療は、保険適用になっていない代わりに助成金制度が存在します。不妊治療を実際に行っている方であれば医療機関などに案内が置かれているため、知っている方も多いと思いますが、これから治療を始めるという方はほとんどご存知ないのではないでしょうか。高額な治療費のかかる不妊治療も、助成金を利用することで自己負担を半分以下に減らせることが可能なのです。

 今年から助成金事業が拡大され、これまでにあった助成を受けるための所得制限が撤廃され、奥さまの年齢が43歳未満であれば誰でも受けられるようになりました。助成額も以前は初回のみ30万円、以後は15万円だったのに対し、40歳未満であれば1子ごとに1回30万円を6回まで、43歳未満は3回まで助成を受けられることになりました。 これは法律婚だけでなく事実婚の夫婦にも適用され、制度の拡充を期に「体外受精に進んでみよう」「体外受精を1回やったが妊娠せず金銭的に諦めていたが、もう1回やってみます」とおっしゃる方も少なくありません。

 助成金は体外受精だけでなく、東京都など自治体によっては一般不妊の検査・治療に対しても独自の助成金制度を行っています。お住まいの地方自治体のホームページをぜひ確認してみてください。

小川誠司

小川誠司

1978年、兵庫県生まれ。2006年名古屋市立大学医学部を卒業。卒後研修終了後に慶應義塾大学産科婦人科学教室へ入局。2010年慶應義塾大学大学院へ進学。2014年慶應義塾大学産婦人科助教。2019年那須赤十字病院副部長。2020年仙台ARTクリニックに入職。2021年より現職。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。

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