最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

ケアマネは患者や家族にとっての一番身近なよろず相談員

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 患者さんが在宅医療を始められるきっかけはさまざまです。一番多いのが、病院の退院支援室や看護相談室から、退院時に在宅医療を行う医院を紹介されるというものでしょう。患者さんが地元の地域包括支援センターに相談した結果、在宅医療を選ぶに至ったというものもあります。

 高齢者の方なら介護について相談をしたケアマネジャー(ケアマネ)から紹介されて……というのも少なくありません。ケアマネは、介護保険制度に基づいた介護サービス計画書の立案だけでなく、定期的な訪問で状況を把握し、患者さんやご家族が抱える問題を分析して有効な解決策を提案する役割も担っています。

 相談者に医療的な介入が必要で、しかし通院が困難だと判断した場合に、患者さんの希望を加味し、在宅医療を行う医院にその患者さんの在宅診療の必要性を打診するのも、ケアマネの役割。患者さんやご家族にとって一番身近なよろず相談員であると言えるでしょう。

 私たちあけぼの診療所がお付き合いしているケアマネさんは、常日頃から在宅医療のことを理解し、信頼を寄せてくれている方。在宅医療を始める前の環境整備など、患者さんにとって必要な準備について細やかな対応をしてくれるので、医療面のみならず患者さんの生活をトータルに考えスピーディーに整えてくれるので感謝しています。

 ある患者さんがいました。その方は認知症と糖尿病、そして活動性が低下したために体にさまざまな症状が出る廃用症候群を患う、要介護3の一人暮らしの男性。

 この患者さんは当初、入院することも在宅医療にも全く乗り気ではありませんでした。その様子にケアマネも「在宅医療導入は難しいのでは」と思いつつ、しかし布団の上で意識を失っているのをたまたま訪問した友人が見つけたり、熱中症でたびたび救急搬送されることが続いたため、定期的に医療の介入が必要と考え、在宅医療をスタートしました。そして在宅医療を開始して2年足らずで、この患者さんは旅立たれて行かれました。

 その時の訪問看護師さんが、スタッフ間で使う医療介護専用SNSに寄せた最期の見送りをした時の様子を紹介します。

「皆さまいつもお世話になりありがとうございます。本日のご様子の報告をさせていただきます。タッチング、声掛けをして10分後にスッと呼吸が止まりました。表情は穏やかでした。医師による死亡診断後、エンゼルケア(死後処置)を行いました。ヘルパーさんに手配頂いた新しい服を着せ、当事業所にあった敷布団も持参し、大好きな日本酒やビールも枕元に置いて穏やかに送り出せました。ケアマネさんが連携の強い在宅チームをつくっていただいたおかげで、最期まで自宅で過ごしたいという患者さんの意思がかなえられ、しかも最期は一人でなく、看取りできて良かったです。皆さまありがとうございました」

 さまざまな人の思いで支えられているのが在宅医療なのです。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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