コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー

歯周病発見アプリの精度と課題 東北大とドコモが共同開発

写真はイメージ
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 歯周病は、20代で約6割、40代で約7割、60代で約7.5割の人に見られ、高齢社会に伴い、今後ますます増加すると考えられている。一方、40歳から70歳までを対象とした歯周病検診の受診率は全国で約5%と推定されており、重症化してから歯科医にかかることも少なくない。

 そこで東北大学とNTTドコモは共同で、2019年4月からスマホで歯茎を撮影するだけで歯周病を発見するAI(人工知能)の開発を進めている。専門医が歯周病だと診断する特徴量(数値化されたデータ)をAIに落とし込むことで、歯茎の色、形状、質感などをAIが解析し、スマホのアプリ上で歯周病のリスクがあるかどうかを表示する。

 専門的な見識や画像データを提供している東北大学大学院歯学研究科の佐々木啓一教授が言う。「現時点では、歯周病発見AIは医療機器ではなく、一般の人が気軽に利用できる健康管理アプリとして開発を進めています。歯周病は、糖尿病や認知症、フレイルなどの全身疾患の発症にも関係していることが数々の研究で報告されています。早く市場導入させて、企業や自治体にも活用してもらい、歯周病検診を受ける動機づけに役立ててもらいたいと考えています」 

 歯周病発見AIは、データの学習において特徴量の設計から選択、抽出に至るまで、人の手を借りずに自動的に行う「ディープラーニング(深層学習)」という技術を用いている。数万枚の口腔内画像のデータを学習させているという。

■目標とする感度・特異度は80%以上

 では、どれくらいの精度を目標としているのか。NTTドコモ・クロステック開発部の土井千章課長が言う。

「適切な環境下で撮影した場合に目標とする学習モデルの精度は、感度・特異度ともに80%以上です。しかし、一般ユーザーが自身のスマホで撮影する実現場では、明るさや撮影角度などで精度が左右されることが考えられます。適切な環境で撮影いただけるようにアプリ上で的確にガイダンスすることができれば、実現場での精度を担保することが可能だと思います」

 歯周病発見AIは、来年度中の実用化を目指しているという。

 また、「顎関節症発見AI」と「口腔がん発見AI」の開発も並行して進められている。顎関節症発見AIは口の開閉動画データなどから検出する一般ユーザー向けアプリ、口腔がん発見AIは歯科医師の診断を支援する製品を想定しているという。

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