科学が証明!ストレス解消法

「断れない人」は分析的思考が弱く、「断れる人」は共感力が弱い

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 携帯電話に知らない番号から着信があり、出てみると勧誘や販売促進の類いだった。あるいは、街中で突然話しかけられ足を止めてしまい、よくよく聞くと怪しい勧誘だった――。

「いえ、結構です」ときっぱりと断れる人がいる一方で、そういったことができず、長話に付き合ってしまう人もいると思われます。心の中では「断りたい」と思っているのに、どこか気まずさや申し訳なさを感じて、抜け出すタイミングを見失う……。

 こういった方に覚えておいてほしいのが、「脳は他者への共感と分析的思考を両立できない」というケース・ウエスタン・リザーブ大学の研究(2012年)です。

 実験では、45人の健康な学生に対して、「他者の気持ちを考えさせる問題」と「物理学を解く問題」を提示し、その上で脳の活動をMRIで解析しました。

 問題は、文章やビデオで出題されたのですが、形式に関係なく片方の機能が活動している場合、つまり「他者の気持ちを考えているケース」では、物理学を解くために必要な脳の部分が抑圧されており、「物理学を解くために考えているケース」の場合は、他者の気持ちを考えるために必要な脳の部分が抑制されていることが分かったそうです。

 脳には、他者に対して理性や感情をつかさどるネットワークと、論理的・数学的な部分をつかさどるネットワークがあります。これを同時に働かすことは、実はとても難しい。どちらかの機能を必要とするタスクを行っている場合は、もう片方のネットワークが抑圧されてしまうのです。

 たとえば、頭では「断ろう」と分かっているのに、ついつい話し込んでしまう。すでに似たようなTシャツを持っているのに、また新しいTシャツを購入してしまう。それらが起こりうるのは、片方のネットワークが抑圧されてしまうためで、判断が鈍るんですね。

 ただし、裏を返せば、共感力があまりない人は物事を分析しがちということ。共感をなかなか得られない人は、一度、分析しすぎる癖をストップし、相手の気持ちに寄り添ってみるといいかもしれません。

 逆に、なんでもかんでも人の言うことを聞いてしまったり、うのみにしてしまったりする人は、「ちょっと待てよ」と、意識的に一度立ち止まるようにしてください。そのまま相手の話に耳を傾ける時点で、「他者の気持ちを考えているケース」に相当するのですから、一呼吸置いて「なんで呼び止められたんだ?」と間をつくって分析するようにしてください。

 相手を批評したり、「でも」「そうじゃなくて」と否定から入る癖のある人がいます。そういった人は、あまり好かれない傾向にあると思います。それは、分析が先行することで相手の気持ちを考えていない。つまり、共感に欠けるために話の分からない人、難しい人と映ってしまうのです。共感と分析的思考の両立はとても難しい。だからこそ、バランスを心掛けてくださいね。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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