解熱鎮痛剤は正しく使わないと深刻な副作用が出るケースあり

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 新型コロナワクチン接種の副反応として表れる高熱や頭痛に備え、解熱鎮痛薬を購入したという人は多い。ドラッグストアでは解熱鎮痛薬が品薄状態となり、今も在庫切れが続いているところは少なくない。わざわざ買ったのだから、今後も熱や痛みが出た時に気軽に服用する人は増えるはず。しかし、誤って使うと思わぬ事態を招く危険もある。解熱鎮痛薬の正しい使い方をあらためて知っておきたい。岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏に聞いた。

 一般的に使われる解熱鎮痛薬には大きく2種類がある。ひとつは「NSAIDs」(エヌセイズ)と呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬で、アスピリン(バファリンなど)、ロキソプロフェン(ロキソニンなど)、イブプロフェン(イブなど)が該当する。もうひとつは「アセトアミノフェン」と呼ばれるもので、カロナールがこれに当たる。大きな違いは炎症を抑える作用があるかないかで、NSAIDsは抗炎症作用があり、アセトアミノフェンにはそれがない。

「NSAIDsは、体内で炎症、発熱、痛みを引き起こす『プロスタグランジン』という物質がつくられるのを抑えることで症状を改善します。発熱以外には、頭痛、生理痛、歯痛、関節痛、腰痛、肩痛といった症状や、外傷後、手術後、抜歯後などに消炎と鎮痛を目的に使われます。ただ、効き目が強く副作用も多いため、一般的に小児には使われません。長期の使用もリスクを高めます」

 NSAIDsには、胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった消化管障害の副作用リスクが知られている。NSAIDsが産生を抑えるプロスタグランジンは、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素によってつくられていて、NSAIDsはCOXの働きを阻害して効果を発揮する。COXには内皮細胞を保護して粘膜を修復させる働きがあり、NSAIDsがそれを阻害してしまうため、消化管障害が起こるのだ。

「また、血管の内皮細胞の保護作用も抑制するため、インフルエンザなどのウイルス感染症で高熱が出て、脳の血管が炎症を起こしている時にNSAIDsを服用すると、血管の修復を阻害して脳血管に損傷を招き、脳症の悪化につながるのではないかと考えられています。そのため、厚労省は小児に多いインフルエンザ脳炎や脳症患者に対してNSAIDsの投与を禁忌としています」

 新型コロナウイルス感染症でも、NSAIDsを服用すると症状を悪化させる可能性が指摘されている。まだ結論は出ていないが、新型コロナに限らず感染症によって発熱した場合は、使用に注意した方がいい。

 もう一方の解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンは、脳の中枢神経や体温調節中枢に作用することで効果を出す。効き目が穏やかで体への負担や副作用も少ないため、子供や妊婦にも処方される。

「こちらも、発熱時のほか、頭痛、歯痛、腰痛、生理痛、変形性関節症などに広く使われています。乳幼児の解熱に使われる座薬もこちらのタイプです。ただ、抗炎症作用がない分、炎症を伴う激しい痛みには不向きです。また、効き目が穏やかとはいえ、肝障害の副作用が報告されています。1日の総量が1500ミリグラムを超えるような高用量を長期使用する場合は、定期的な肝機能検査を行うなど注意が必要です」

 38度5分を超えるような高熱が出た場合、熱性けいれんを起こしたり、臓器がダメージを受ける危険もある。また、痛みを長くガマンし続けていると、痛みに対して敏感になり軽い刺激でも痛みを感じやすくなったり、ストレスや不安といった心理的要因が加わって慢性化し、治りづらくなる可能性がある。解熱鎮痛薬を服用して熱を下げたり痛みを和らげるのは悪いことではない。

「ただ、解熱鎮痛薬は一般的に急性病態に対して使うもので、慢性期には使いません。長期に使用するとさまざまな副作用のリスクが高くなるためです。頻繁に使用したり、服用量を増やしたりすることは避け、適切な用量と用法を守ることが重要です」

 ちなみに、腹痛の場合は一般的に解熱鎮痛薬は使用されず、「抗コリン剤」に分類されるブスコパンが使われる。腹痛の多くは、炎症ではなく腸の蠕動運動の高進が原因であるため、内臓の筋肉を動かしているアセチルコリンという物質の働きを抑えて腸の蠕動運動=けいれんを抑制するブスコパンが選択される。合わせて覚えておきたい。

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