自分は絶対にだまされない。日ごろからニュースや情報をチェックしている自分とは、無関係だ──。そんな自信を持っている人は少なくないと思います。ところが、オックスフォード大学の研究(2014年)に、「頭の良い人ほど他人を信じやすく、あまり頭の良くない人ほど他人を信用しない」という興味深い報告があります。
実験では、被験者に知力テストを行い、彼らの行動や社会的態度に関する質問をしました。その結果、知力の高い人は人を信用しやすい傾向が強く、知力の低い人はなかなか人を信用しないことがわかったといいます。配偶者の有無、教育、収入に関わりはなかったそうです。
頭の良い人は、周りに頭の良い人しか集まらないため、自分の価値観を信じ切ってしまう傾向がみられたといい、プライドも高いため、「自分が間違えるはずがない」と疑いづらくなるそうです。
一方、あまり頭の良くない人ほど他人を信用しないのにも理由があります。研究を行ったカールは、「知能レベルの低い人は、人を見抜くことができず、やみくもに心を閉ざしてしまうのではないか」と、少々手厳しいコメントを発表しています。
関連性理論という「理論」、あるいは「学説」があります。
人は、言葉を聞いたとき、最小限の労力で、最大限の意味を理解する傾向が強いといいます。自分の持っている知識や言葉を、(相手の)発した文脈や状況などに勝手に関連付けてしまう。たとえば、オレオレ詐欺は最たる例で、「オレ」という最小限の言葉で、受け手は最大限の意味(=息子など)を解釈してしまうのです。
また、オレオレ詐欺では、「○○法律事務所の××」とか、「新宿遺失物預かりの△△」などの言葉を巧みに利用し、相手を信じ込ませます。これら「法律事務所」「遺失物預かり」などの言葉も、まさに最小限の労力で最大限の意味を理解してしまう言葉でしょう。わざとあいまいな言葉を使い、勝手に相手がつじつまを合わせるのを待っているんですね。
相手が疑うだろう部分を、「法律事務所」「遺失物預かり」などのもっともらしい最小限の労力の言葉で補う。すると、再び受け手は勝手に解釈する。そして、最終的に信じてしまう……。
頭の良い人であれば、それこそ最大限の意味を理解するスピードが速いため、意外に引っかかってだまされてしまうのでしょう。頭の良い人が、うたぐり深い人とは限りません。うたぐり深ければ、当然、被害に遭うケースは少ないはず。ですが、「私は頭が良いから大丈夫」と過信するのは、非常に危ういというわけです。
いろいろな解釈ができる言葉=最小限の労力の言葉ですから、そういった言葉を使っているときは注意が必要。例を挙げるなら、「オレ」「事故」「風邪をひいた」などのボヤッとした言葉。詳細がボヤッとしている文脈は、簡単に信用しないようにしましょう。
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