科学が証明!ストレス解消法

「社会的手抜き」をなくすことが仕事の効率化につながる

リンゲルマン効果(写真はイメージ)
リンゲルマン効果(写真はイメージ)

 昨年12月は、コロナが若干落ち着きを見せていたこともあり、久しぶりに忘年会を楽しんだ方も多かったのではないでしょうか? 現在、また感染者数が伸びているので油断禁物ですが……。

 飲み会にまつわる興味深い考察があります。それは、「割り勘のジレンマ」。

 たとえば、アルコールが飲めないため、ソフトドリンクだけを飲む人がいたとしましょう。ソフトドリンクは、アルコール類に比べると安価です。しかも、会計は割り勘と事前に伝えられている。これではお酒が飲めない人はフェアだと思えず、納得がいかないかもしれません。

 そのため、飲めない人の中には、「ちょっと高めの料理を頼んで、多めに食べてやろう」なんて考える人もいるでしょう。その心理こそ、割り勘の落とし穴です。このように、参加した多くの人が「割に合わない」ことを避けたいがために、「損しないように多めに飲んで(食べて)やろう」などと考えてしまう。

 すると、どうなるでしょうか? 当然、飲食代は膨れ上がっていきますよね。一人一人が自分の利益を優先して取った行動が、最終的に自分たち全員のコストを増大させている。これが「割り勘のジレンマ」です。実は、全員がコストを高くした共犯者とも言えるのです。

 こういった全体の意図や意識が絡み合うことで生じるジレンマを、広義で「社会的ジレンマ」と呼びます。その最たる例が、心理学者・リンゲルマンが提唱した「社会的手抜き」(リンゲルマン効果)です。

 リンゲルマンは、綱引きを利用して実験(1913年)を行いました。綱引きに参加する人数を徐々に増やし、力の入り具合がどう変わるかを調べました。

 その結果、1人で綱引きをした際の力の入れ具合を100%とすると、2人の場合は93%に、3人の場合は85%になることが分かりました。なんと8人の場合は、1人当たり49%まで減少したそうです。つまり、集団になるほど、「誰かが何とかしてくれるだろう」という手抜きの心理が働くわけです。

 裏を返せば、人数が増えるほど責任感も分散してしまうことが示唆された。しかも、無意識でこういった心理が働いてしまうというから厄介です。チームで抱えている仕事があったとして、誰も率先して動かないのは、自分が動かなくてもいいだけの人数がいるから--。人が多いからこそ、「社会的手抜き」が起こらないよう、マネジメントしておかなければならないというわけです。

「誰かが何とかしてくれるだろう」を放置しておくと、組織内、チーム内に齟齬(そご)が生じ、自らもストレスが蓄積されていくだけ。しかも、責任感が強い人、性格の良い人が、“誰かがやるだろう仕事”を引き受け、彼ら彼女らが疲弊してしまうといった悪循環をつくり出してしまう。

 優秀な人材がいなくなってしまう背景には、無意識下の「社会的手抜き」の影響もあると言えそうです。チームを機能させるためには、きちんと役割分担やルールを決め、「誰かが何とかする」ことをなくしていく。結果的に、仕事をする上でストレスをなくすことにもつながるはずですよ。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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