「介護保険外サービス」ってなんだ? コロナ禍で新たな需要

ワクチン接種の付き添いは介護保険外サービスを利用
ワクチン接種の付き添いは介護保険外サービスを利用(C)日刊ゲンダイ

 65歳以上の高齢者のコロナワクチン3回目接種がすでに始まっているが、「自宅から接種会場まで老親の付き添いが必要。しかし『離れて暮らしている』『仕事を休めない』などさまざまな理由で自分はできない」という人は少なくないだろう。そんなとき、知っておくといいことのひとつが、介護保険外サービスだ。

■老親のワクチン接種付き添いに

「コロナで新たな需要が出ている」と話すのは、介護福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)で、介護保険外サービスを提供する「クラウドケア」を運営する小嶋潤一氏だ。

 冒頭で紹介したように、多いのが、コロナワクチン接種の付き添いについての依頼。コロナで帰省できないので、自分の代わりに老親の買い物の介助をしてほしい、掃除をしてほしい、話し相手になってほしい……といったものもある。

「海外に赴任している方から、『コロナで日本に戻りたくても戻れなくなった。親が介護が必要になり、介護保険外サービスの介助をお願いできないか』という問い合わせも増えています」(小嶋氏=以下同)

 オミクロン株の流行で感染者が急増している。これまで来てもらっていた訪問介護員(ホームヘルパー)が感染者、または濃厚接触者となってしまい、訪問してもらえなくなった。別の人をよこしてくれるよう介護事業所へお願いしているが、人手が足らず、難しい。そこで、普段は訪問介護員頼りのサービスを、代わりにお願いできないだろうか──。コロナ禍ならではの、こんな依頼もある。

 介護保険は、65歳以上の高齢者、または40~64歳の特定疾病患者のうち介護が必要になった人に対し、その費用を給付してくれる保険。介護保険で受けられるサービスは決まっており、「生活援助」では掃除、洗濯、寝具の整え、料理、買い物、薬の受け取りなど。「身体介護」では食事介助、排泄介助、入浴介助、衣服の着脱介助、就寝・起床介助などだ。

■介護保険では受けられないサービスのこと

 一方、日常生活をざっと見渡すと、介護保険で受けられないサービスは結構多い。掃除は介護者がいる部屋だけ。同居家族の料理を、介護者用のものと同時に作るのも、介護保険ではできない。草むしりや花木の水やり、犬の散歩、大掃除、窓のガラス磨き、おせちなど特別な料理の調理などもNGだ。

「病院への行き帰りの付き添いはできますが、病院で診療が終わるまで付き添うことはできません。買い物は必要不可欠なものだけで、お菓子やたばこなど嗜好品を買うために別の店に寄ることはできません。散歩を一緒にしたり、趣味の外出の介助も介護保険ではできないサービスです。認知症の要介護者を夜間ずっと見守るというのも介護保険外。また、介護保険サービスを受けられるのは介護認定を受けている人だけで、元気な高齢者は対象外です」

 つまり介護保険外サービスとは、介護保険では受けられないサービスのこと。介護保険外サービスの提供者には、市区町村や介護サービス事業者、社会福祉協議会、民間企業などさまざまあるが、これらのサービス提供者は、介護保険内のサービスも同様に提供している場合があるため、介護保険外かどうかよく確認するとよい。最近では、ネットで簡単に頼めるサービスや、依頼からサービス提供までの期間が短いものも出てきているという。

 ただ、介護保険外サービスの存在は十分に知られているとはいえない。困りに困って、ネットで探して初めて知った、という人が珍しくない。

「介護保険外サービスは要介護者だけに限らず、サービス提供者が定める条件を満たした人ならだれでも受けられる。介護保険サービスと介護保険外サービスを上手に使い分けることで、高齢になっても潤いのある生活を送ることができます」

 サービス提供者によって値段が異なり、またどういうスキルを持った訪問介護員が来るかも異なる。依頼する前に確認した方がいい。

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