60歳からの健康術

自由診療歯科医が教える歯のケア(8)コロナ後遺症では歯のケアが重要

写真はイメージ
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 新型コロナ感染症が止まらない。感染者数の割に死亡者が少ないのがまだ救いだが、大勢の感染者の出現で気になるのは後遺症だ。感染者の中には倦怠感やうつ的症状などの後遺症が長期間続くことが報告されている。 とくに多いのが味覚・嗅覚障害だ。歯科的にはこれが問題だと自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」の木村陽介院長が言う。どういうことなのか?

「味覚、嗅覚の喪失は唾液の分泌を抑制し、口腔内環境を悪化させます」 前回でも紹介したが、中高年の虫歯や歯周病が増える一因は唾液の量や質が落ちるからだ。加齢で歯茎が下がると中高年の歯は硬いエナメル質から下の軟らかい象牙質の歯根部が露出して虫歯や歯周病の原因となる細菌などが付着しやすくなる。

「しかも、新型コロナ禍では精神的なストレスにより睡眠中の歯ぎしりがひどくなり、歯列が歪んでいる人が増えています。中高年の中には持病で唾液の分泌が抑えられる薬剤を飲んでいる人もいるでしょう。その結果、虫歯になりやすい状態の人が増えているのです。加えて味覚や嗅覚の障害があると、そのリスクに拍車がかかります。唾液には食べ物を口にしたときやその匂いで大量に分泌される刺激唾液があります。味覚や嗅覚を喪失すると食事がおいしく感じられなくなって、食べ物を噛む回数が減ることにつながります。そうなれば、肝心な刺激唾液が減り、唾液の分泌が少なくなってしまい、唾液で細菌や真菌を抑制することもできなくなります。結果、口腔内に食べカスがより多く残り、細菌や真菌が処理されないまま口腔内で繁殖することになります」

 だからこそ、味覚や嗅覚に異常を感じたら、自分で意識的に噛む回数を多めに決めた方がいい。「よく、ひと口30回の咀嚼が勧められますが、中高年は40回くらいは噛む方がいいでしょう。唾液の分泌量が大きく変わってきます。また、最近は食事で飲み物と一緒に食べ物を流し込んでいる人がいますが、感心しません。唾液の分泌なしで食事できるようになり、分泌量が減ってきます」

 当然のことだが、毎回食事が終わった後は歯間ブラシで歯と歯の隙間に残る食べカスを取ること。歯磨きは少なくとも1日2回、手動では届かないところまで奇麗にできる電動歯ブラシで朝と夕食後に磨くこと。就寝前は洗口液で口腔内を清潔にする。フッ素入りの虫歯予防薬を使うのもいい。

「新型コロナが怖いからと受診控えしないようにしましょう。唾液や血液に関わっている歯科医師は感染対策のプロであり、設備も整っています。中高年の虫歯は進行も速いので受診控えにより、歯が急に悪くなるケースもある。3~6カ月ごとの定期歯科検診は受診することが大切です」

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