時間栄養学と旬の食材

甘エビは晩酌に食べたい 睡眠の質を向上させるグリシンが豊富

ビタミンEがエビ類の中でも多く含まれる
ビタミンEがエビ類の中でも多く含まれる

 ホッコクアカエビの通称名は「甘エビ」。主に北海道、新潟、富山、石川などの日本海沿岸で水揚げされます。加熱前から赤色で唐辛子に似ていることから、南蛮エビや南蛮とも呼ばれています。刺し身として提供されることが多く、お寿司屋さんなどでよく見かけるネタではないでしょうか。

 甘エビは成長過程で性転換をする生き物に属します。生まれて3年ほどは性別がなく、4~5年目にすべてオスとなり交尾に参加。その後5~6年でメスに性転換し、7年目に卵を抱えた状態になるのです。寿命は11年ほどで、その間3回以上産卵すると報告されているものもあります。

 直径1ミリ程度の青い卵をつけた甘エビは、甘エビの中でも最も高値で扱われ、その卵は珍味のひとつとされています。

 そんな甘エビに含まれる栄養素のひとつが、アンチエイジングに効果的なビタミンEです。エビ類の中でも含有量が多く、免疫機能の維持にも役立つことが分かっています。脂に溶けやすい性質を持っているので、より効率的に取り入れるのであれば揚げ物、お刺し身であればオリーブオイルと合わせたカルパッチョなどもおすすめです。

 また、疲労回復や肝機能の向上に役立つタウリンも豊富です。二日酔いや悪酔いを予防するためにも、おつまみとして食べるのもいいですね。

 特有の甘味に含まれるのはグリシンやアラニンなどのアミノ酸です。グリシンは体の中で作り出すことのできないアミノ酸のひとつで、取っておきたい栄養素。睡眠の質を向上させる作用があるので、就寝前に取ることで深く良質な睡眠を得られることがわかっています。夕飯や晩酌の際に食べるのは理にかなっているといえるでしょう。

 そして、体内でコレステロールに吸着する作用を持つキチン・キトサンも含まれています。傷の治りを早くする効果も報告されている話題の栄養素です。

 その他、がんや生活習慣病の予防に効果的で、赤色の天然色素成分であるアスタキサンチンも、甘エビには多く含まれています。

 キチン・キトサンもアスタキサンチンも甘エビの殻や尾に特に多いので、お刺し身などで殻が余った際には唐揚げなどにして食べるなどの工夫もいいかもしれません。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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