腰痛のクスリと正しくつきあう

腰痛治療に血管拡張剤や疼痛治療薬が使われるケースもある

写真はイメージ
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 腰痛の原因として考えられる疾患に腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症があります。脊柱管の血管や神経が圧迫を受けることにより痛みやしびれが生じます。特に下肢の痛みが強く、座位(座っている状態)よりも立位(立った状態)で歩行する際に背中を曲げないとつらい症状が続くのが特徴とされています。

 腰部脊柱管狭窄症の薬物治療によく使用されているのが、血管拡張薬の「リマプロストアルファデクス錠(オパルモンなど)」です。もともとは血管の炎症や血栓に起因する冷感や疼痛(とうつう)症状を改善するために使われていた薬ですが、現在は整形外科領域でも多く処方されています。血管の平滑筋に直接作用して末梢の血管を広げ、血小板の凝集を防ぐことで血流を促し、手足のしびれや痛み、冷えを和らげる効果があります。

 この薬は錠剤の特性として吸湿性が強いので、服用する直前に包装から取り出す必要があります。また、抗凝固薬のワルファリンカリウムや抗血小板薬のクロピドグレルなど血液をサラサラにする薬を使用されている方は、効果が増強されて出血しやすくなる危険がありますので、医療機関や薬局などで確認してください。出血を伴う手術や侵襲的な処置を行う場合は、休薬する必要があるので特に注意が必要です。

 腰部脊柱管狭窄症に対しては、これまでお話しした非ステロイド性抗炎症薬や筋弛緩薬、ビタミン剤なども用いられていますが、これらの薬剤が有効であるといった高いエビデンスは得られていません。

 また最近は、座骨神経痛や帯状疱疹後神経痛などに起因する神経障害性疼痛に対して、Ca2+チャネルα2δリガンドと呼ばれる疼痛治療薬の「プレガバリン(リリカなど)」が多く処方されています。腰痛診療ガイドラインでも、座骨神経痛に対する推奨薬になっています。

 痛みの伝達に関わる物質の産生を抑える作用があると考えられている薬で、炎症を抑える作用はなく、神経系に分布するカルシウムイオンチャネルに結合して鎮痛作用を発揮するといわれています。

 主な副作用として、眠気、めまい、意識消失などがあるので、とりわけ高齢者では転倒に注意しなければなりません。自動車事故につながったケースも報告されているので、危険を伴う機械の操作や作業は厳禁です。また、頭痛や便秘、体重増加、目のかすみ(霧視)が起こる場合もあります。

 服用を開始する際は徐々に増量していき、中止する場合も1週間以上かけて少しずつ減らす必要があります。また、腎機能が低下している方は慎重に投与することとされているので、受診時に医師に伝えてください。

池田和彦

池田和彦

1973年、広島県広島市生まれ。第一薬科大学薬学部薬剤学科卒。広島佐伯薬剤師会会長。広島市立学校薬剤師、広島市地域ケアマネジメント会議委員などを兼務。新型コロナワクチンの集団接種業務をはじめ、公衆衛生に関する職務にも携わる。

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