五十肩を徹底解剖する

よくある「凍結肩」の質問 日常的に運動していても発症する

速やかに炎症を鎮めることが重要
速やかに炎症を鎮めることが重要(C)日刊ゲンダイ

 中高年の肩の痛みの中で頻度の高い「凍結肩」。患者さんからよく出る質問の3回目です。

■予防法はありますか?

 これは、よくわかっていません。ジム通いやヨガを習慣にしていて、背中で握手できるくらい体が柔らかくても、凍結肩を生じた例を散見します。発症するきっかけも、原因がないか、肩をちょっとぶつけたなど、ささいなことが多いようです。

 ただし、糖尿病患者さんは一般の方より発症する頻度が高く、凍結肩手術後の治り具合が劣るとされています。「糖尿病は万病のもと」とよく言われますが、肩にも決してよくないのですね。

■ステロイドは怖くないですか?

 凍結肩では炎症を速やかに鎮めるため、ステロイド薬の関節内注射や内服を第一に提案します。しかしステロイドと聞くと、副作用がある、一度使うとやめられない、スポーツ選手のドーピングなどを連想され、過度に心配する方がいます。

 ステロイドは怖いどころか、適切に使えば速やかに炎症期の肩の痛みを和らげてくれるありがたいものです。

 本来ステロイドは体の中で自然と作られる、健康バランスを整える物質です。“刃物も使いよう”で、人を傷つけることもあれば、有用な道具にもなります。病院では肩治療に限らず健康バランスを崩した患者さんに適切に使います。

 肩治療では、ステロイドは少量、短期間の使用で済むことが大半です。

■ステロイド以外の薬はありませんか?

 肩への注射薬では、高齢者の膝痛にも使われるヒアルロン酸があります。飲み薬には、ステロイドが入っていない痛み止め(非ステロイド性消炎鎮痛剤)があります。ひどい痛みにはオピオイド系鎮痛剤という飲み薬も使われます。

 注射や飲み薬がためらわれる場合は湿布や塗り薬も用いられます。

 ただ、前述の通りステロイド薬は決して怖いものではなく、一般的な痛み止めや湿布より強力に鎮痛が期待できます。担当の先生とよく相談してご自身に合った薬を選び、速やかに痛みから解放されることを願っています。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

関連記事