Dr.中川 がんサバイバーの知恵

キャシー中島さんは皮膚がんで顔に22針…術後の美容は形成外科医の実力が重要

キャシー中島さん
キャシー中島さん(C)日刊ゲンダイ

 2度の皮膚がんを克服したキャシー中島さん(70)が、自身のブログでその手術痕について語っています。「写真を撮る時、いつも顔の左側」にしているのは、「右側だけに2か所皮膚癌を手術したあとがある」ためでしたが、その右側も「だいぶ綺麗になってきました」ということから、「ジャーン!!右側はこんな感じ!」と右からの様子を公開したのです。

 これまでの報道によると、中島さんは2016年2月に右目の下に皮膚がんが判明して、3センチ切除。昨年9月には右の鼻の違和感から新たな皮膚がんが判明。腫瘍そのものは1ミリだったそうですが、22針も縫ったといいます。

 顔の手術痕は、女性でなくてもショックでしょう。しかし、ブログを拝見する限り、傷痕はまったく分かりません。実は皮膚がんの手術は、皮膚科医ではなく、形成外科医が行うことも多く、美容的に問題となるケースは減っているのです。

 そうはいっても、美容が問題になることがないわけではありません。その典型が、頭頚部がんです。さらに乳がんもあります。

 頭頚部がんは、鎖骨から上、首や頭などにできる腫瘍です。そこにできたがんを切除すると、見た目のほか会話や嚥下(えんげ)、呼吸など生きていくうえで不可欠な機能が損なわれますから、形成外科医による再建がとても重要です。

 再建とは、失われた部分を患者さんの別の部分から移植することで補う手術のこと。骨や筋肉、皮膚などを移植します。その組織は血管がついたまま採取し、移植先の血管とつなぎ合わせて血流を確保。ミクロン単位の微細な手術のため、マイクロサージェリーと呼ばれます。

 ですから、頭頚部がんで手術を受ける場合、同じ病院で再建手術を受けるのがベター。頭頚部がんの治療実績のほか、形成外科の実力を評価しながら治療施設を選ぶとよいでしょう。

 とても大がかりな手術で、生活の質に大きな影響を与えるため、切らない治療を検討するのも大切でしょう。それが化学放射線療法で、喉や舌、食道などのがんでは、手術を避けられる可能性が高い。当然、外見への影響はなく、嚥下や発声などの機能も守ることができます。

 一時的に胃ろうをつけるケースもありますが、あくまでも一時的。治療期間も数カ月に及びますが、長期的にはお勧めだと思います。

 乳がんも、今は乳房を温存する手術が可能。しかし、術後の美容面は、乳房の形や左右の位置など執刀医の力量差が大きく表れます。温存手術を受けるときは、症例数が多い医療機関を選ぶこと。その上で、別の乳腺外科医にセカンドオピニオンを求め、執刀医の力量をチェックするといいでしょう。

 乳房を切除して再建する場合は、頭頚部がんのケースと同様に、形成外科の実力とセットで医療機関を選ぶことが大切です。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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