がんと向き合い生きていく

われわれが地球で生きていくためにやらなければならないこと

佐々木常雄氏
佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 減少傾向にあるものの新型コロナの感染流行がなかなか収まりません。しかも、テレビでは悲惨な戦争の報道が続き、とてもやりきれない思いの日々ですが、久しぶりに心を打たれる映像を目にしました。スウェーデンの環境活動家で、地球温暖化の弊害を訴えるグレタ・エルンマン・トゥンベリさん(19歳)の映像です。

「大人が私の未来を台無しにしようとしている」

「あなたたちは私たちにウソをついた。虚偽の希望を与えた。状況はとても悲惨である」

「同意だけではダメだ。実際すぐに行動しないと地球は大変なことになってしまう」

 そう訴えています。

 グレタさんは15歳の時にスウェーデン議会の外で抗議を始め、その後はさまざまなフォーラムに招待され、スピーチを行ってきました。

「パリ協定の一環として、地球温暖化を1.5度に制限するためにさまざまな政府が採用した戦略は不十分である。2030年までに、二酸化炭素排出量をパリで協定した40%という目標量の2倍の80%削減しなければならない」

 温暖化で、洪水、山火事が増える。台風が増える、砂漠が増える。北極南極の氷が解け、ホッキョクグマのすむところがなくなる、エサがなくなる。海水が増え、陸地が減る。南太平洋の小さな島が海に沈む……。

 本当にそう思います。

 地球温暖化の阻止は、もう間に合わないのかもしれません。ここ2、3年の夏の暑さはひどく、多数の老人が熱中症で亡くなっています。

 グレタさんは、招待された講演のために米ニューヨークへ向かう際、二酸化炭素を排出する燃料が使われる飛行機や船には乗りません。命をかけてヨットで向かうのです。港の沿岸では、待ち受けたたくさんの人々が手を振って出迎えます。

 日本でも、グレタさんに賛同し、地球温暖化の弊害を訴える高校生らのグループも頑張っているようです。

■世界のがん死亡者は960万人だが…

 21年10月31日から11月13日にかけて英国のグラスゴーで開催された「COP26」(第26回気候変動枠組条約締約国会議)では、「排出削減対策を講じていない石炭火力発電所の削減および非効率的な化石燃料補助金の段階的廃止」が成果文書の中に盛り込まれたといいますが、日本は賛同していないと聞きます。

 日本の発電量に占める再生可能エネルギーの割合(19年度)は18.5%にすぎず、火力発電に大きく依存しているようです。海の中に、風力発電のための大きな風車を目にすることもありますが、島国の日本ではもっと活用すべきだと感じます。

 さらに、日本で最も有力と思われるのは地熱発電です。

 火山が多く、温泉は日本の各地に存在します。熱い湯が高く噴射しているシーンを見られる場所もあります。

 素人の私でさえ、これを活用すべきだと思うのです。

 山の斜面、日当たりの良い場所、家屋の屋根にソーラーパネルを設置している景色も見かけるようになりました。太陽光と蓄電池のキャンペーンが実施されている地域もあるようです。

 太陽光はもっともっと利用すべきと思っていたところ、東京都では、新築の家屋の屋根には太陽光パネルの設置を義務化するよう条例を改正するとのことです。

 話は変わりますが、世界での新たながんの罹患数は12年が1410万人、22年は推定1810万人とされ、がんで亡くなる数は12年が820万人で、22年は960万人と予想されています。人口増加と高齢化が主な原因だといいます。

 日本では、18年にがんと新たに診断された人は98万856例、20年にがんで亡くなった人は37万8385人(男性22万989人、女性15万7396人)で、死亡総数の27.6%を占めています。1981年以降、39年連続で死因のトップです。

 一方、新型コロナは全世界で感染者が5億人を超え、死者は600万人以上とされており、実際の数はその3倍以上ともいわれます。日本での死者は3万人を超えています。

 さらにウクライナでは、戦争で民間人がすでに3000人以上、小さな子供までもが殺されているのです。

 戦争を止め、コロナ感染を抑え、もっともっと地球温暖化を阻止しなければなりません。人間がこの地球で生きていくために。

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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