五十肩を徹底解剖する

高齢者こそ検討してほしい新治療「リバース型人工肩関節置換術」

写真はイメージ
写真はイメージ

 修復不能な腱板断裂で肩が痛く上がらない患者さんに対する新しい治療法「リバース型人工肩関節置換術」。今回はよく出る質問をまとめてみます。

【何歳でも受けられる?】

 手術を乗り切る体力があるかどうか。手術前の健康診断で問題なければ年齢に関する心配は杞憂です。そもそも導入当時(2014年)の適応は、原則70歳以上。若い人向けではないのです。つらい肩の痛みを抱え、生活を楽に過ごしたいという高齢者こそ検討していただきたい治療です。

【治療でどう変わる?】

 多くの場合、痛みはすっかり取れ、コリや張りがあっても自己対処が利くようになります。

 腱板がなくともバンザイするには合理的なデザインで、術後1~3カ月ほどで頭の高さまでバンザイできるようになります。ただし、リバース型人工肩関節は自然な肩構造でなくなるため、動きに特徴があります。健康な時とまったく同じバンザイまでには至らず、後ろ手に回すのは苦手です。背中が丸く、腹囲がある方は、お尻を拭くことが難しくなるかもしれません。

 リバース型人工肩関節の力源は、肩関節を前後及び外側から覆う分厚い筋肉(三角筋)だけに頼っています。男性の肉体労働者は、もとの三角筋筋力もあるので重い物を持ち上げられるようになる見込みが高いです。ただし、耐用性の問題からどのくらいの重量まで可能かは厳密な見解がまだありません。酷使すれば三角筋も疲弊するため、長期的には筋力が落ち挙上力も低下するでしょう。愛護的に扱うことが大事です。

【スポーツは可能?】

 スポーツジム、プール、ゴルフなどは復帰できることが多いです。しかし野球など頭の上で腕を思い切り振るスポーツは難しいとされています。

 リバース型人工肩関節置換術は、関節リウマチで肩の変形が著しい例、肩の骨折後で強く後遺症が残る例にも適応があります。治療法がないままお悩みの方は一度お近くの肩外科医にご相談に行かれることをおすすめします。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

関連記事