五十肩を徹底解剖する

石灰が腱板内にたまる「石灰沈着性腱板炎」レントゲンで容易に診断

写真はイメージ
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 中高年の肩の痛みとしてくくられていた「五十肩」。実はきちんと調べてみると「凍結肩」「腱板断裂」という独立した疾患である可能性があることについて、これまで話してきました。

 今回は「凍結肩」「腱板断裂」と並び、最初は「五十肩」と思われて受診されることの多い「石灰沈着性腱板炎」についてお話しします。

 石灰沈着性腱板炎は、その名のとおり、石灰が腱板内にたまる疾患です。石灰とはカルシウムを含む化合物の一種を指します。なぜ腱板内にたまりやすいのかについては諸説あり、はっきりとした見解はわかっていません。

 人口に対する発生頻度は2.7~22%とされます。40~50歳代の右肩に発生しやすく、報告にもよりますが、性差では女性に起こりやすいようです。

 主な症状は、肩を動かしたときの引っ掛かりや痛み、日常生活に支障をきたす可動制限です。

 頻度と症状だけみれば、いわゆる「五十肩」と思われるのも仕方がないかもしれません。また、きちんと調べておかないと、これまで整理してきた「凍結肩」「腱板断裂」とも混同するかもしれませんね。

 その他、特徴的な症状としては突然発症する急激な痛みです。中には痛みがひどく、深夜に飛び込みで救急病院を受診される患者さんもいます。

 幸いなことに石灰沈着性腱板炎の診断はレントゲンで容易にできます。カルシウムを含む石灰はレントゲン撮影で影として写るからです。いわゆる「五十肩」とも、また「凍結肩」「腱板断裂」との鑑別にも非常にありがたいことです。

 一方、「腱板断裂」の診断で有用であったMRIでは、腱板と石灰は似たような色合いで写ります。前述の通り、石灰は腱板の中に沈着しますので、闇夜のカラスがごとく見分けが難しいことがあります。

 ときおり「五十肩はレントゲンに写らない」「MRIがあればレントゲンはいらない」と考え、MRI撮影だけを希望される方がいます。しかしレントゲン検査は中高年の肩痛である「五十肩」のスクリーニング検査として有用な基本的検査と考えています。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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