年を追うごとに疲れやすくなった。少し動いただけでグッタリ、なんだかいつもだるい……。若い頃のように無理が利かないのはわかっていても、倦怠(けんたい)感の強い状態が続くと気力までなくなってつらいものです。
年を重ねるにつれて、運動機能は低下していきます。歩行時に膝を支える脚の筋肉量が減って歩く速度が落ちるので、短い距離の移動でも疲れやすくなります。また、膝関節の軟骨が摩耗して、膝の痛みが現れやすくなります。そのため歩いたり、運動する機会が減ってしまうことで、さらに筋肉量が減るという悪循環に陥り、いよいよ体力が落ちて疲労も蓄積しやすくなってしまうのです。
さらに老化によって内臓は縮小し、その機能は低下していきます。心筋の力が衰えることで、脳や全身の臓器への栄養や酸素の供給が不足。また、肺活量の減少、消化器官がスムーズに働かないことによる食物摂取量の低下や消化不良なども、疲労の要因になります。
中医学では、疲労は「気が不足した状態」と考えます。気は体内の至るところを巡っている、気は目には見えないエネルギー。生命活動を維持するうえですべての基本です。不足すると、疲れやすく常に倦怠感があり、免疫力も低下してしまいます。気が充実していれば元気、気が足りなくなると病気になり、気力も萎えてしまうのです。
気は老化に伴って目減りします。年をとるほど気をしっかりと補う食養生が大切です。
また、とりわけ夏は気を消耗しやすい季節。汗と一緒に気が排出されるため、「夏バテ」してしまうのです。この時季は、とりわけ気を補うことに努めましょう。
そして、老化をつかさどる臓器である「腎」の働きを高めることも、シニアの疲労対策にとって重要です。
おすすめの食材はブロッコリー。気を補う優れた効果とともに、腎の働きを高める働きがあります。そして、腎だけでなくすべての臓器を強化し、滋養強壮に効果絶大。新陳代謝を高め、免疫力アップにも威力を発揮します。
記憶力低下、関節・筋肉の強化、胃腸の機能向上にもよく、シニアの体力向上には欠かせないといってもいいほどの野菜なのです。
ブロッコリーは栄養学的にもビタミンやミネラルの含有量が高い野菜です。近年では、さまざまな病気を防ぎ、健康維持に重要な成分「ファイトケミカル」のひとつである「スルフォラファン」が含まれていることでも注目を浴びています。スルフォラファンには優れた解毒・抗酸化作用があり、がんをはじめとする生活習慣病の予防や、薄毛の改善も期待できるとされています。
ブロッコリーを小房に分けたり、ゆでるのが面倒……というときには、ブロッコリースプラウトが便利です。さらに、うれしいことにブロッコリーそのものよりも、スルフォラファンの含有量が豊富。スルフォラファンを高濃度に含むブロッコリースーパースプラウトも販売されています。
ブロッコリーの疲労回復効果を高めるためには、気を補う効果の高い鶏肉、豆類、キノコ類などと組み合わせるのがおすすめです。 (水曜掲載)
ブロッコリー高齢薬膳レシピ
ブロッコリースプラウトと鶏肉のパワフルそうめん
気を補う働きがあるブロッコリー、鶏肉、枝豆を組み合わせたレシピ。ブロッコリースプラウトと、焼き鳥缶、市販のゆでそうめんを使えばアッという間に、パワーアップにうれしいそうめんが完成! ごま油がそうめんと具をつないでおいしくいただけます。
【材料】2人分
●ゆでそうめん 2人分
●ブロッコリースーパースプラウト 2分の1パック
●焼き鳥缶(タレ) 1缶
●むき枝豆 20粒
●ごま油 少々
【作り方】器にそうめんを盛り、ブロッコリースプラウト、焼き鳥、枝豆をのせて、添付のめんつゆ、ごま油をかける。
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