認知症を予防する補聴器のすべて

「小声の友達の言葉を聞き取れるようになってうれしい」80代女性の言葉

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 多くのお客さまと日々接していますが、みなさん、補聴器を検討したきっかけもさまざまです。

 例えば、生活する上で家族が日常的に大声を出さないといけなくて疲弊していたり、テレビの音が大きすぎて家の外まで大音量で聞こえていたり。またデイサービスや訪問介護・看護を受けるときに介護してくれる人とお話ししたいから、病院で先生の話が聞き取れず説明が理解できなくて困るなど……。いずれも生活を送る上で差し迫った理由によるものでした。

 そんな中、この連載を読んだご家族からの勧めで購入されたお客さまがいらっしゃいました。

 この方は現在80代の女性。中学時代、野球のボールが左耳を直撃し聴力が低下。左耳がほぼ聞こえず日常生活に支障を抱えながら長い年月過ごしてきたそうです。加齢で右耳の聴力も低下し始めたために、7~8年前に近隣の耳鼻科で診察を受けて補聴器を購入したのですが、その煩わしさからほとんど使用せず、そのうち紛失したとか。

 ですが先日、近隣の耳鼻科で数年ぶりに聴力検査を実施したら以前よりも低下しており、再び補聴器購入を決断することになったのでした。

 もともと声が大きい方でしたので、補聴器をつけてちょうどいい大きさに慣れることが必要でした。

 ですが会話の際に相手の声が大きいと自分の声もつい大きくなるので、本人が声を小さくすれば相手の人も少し楽になること、またテレビをつけた状態での会話は、テレビの音量よりも大きな声で話す必要があるので、健聴者でも聞きづらいことがあるなどをお伝えしました。

 これまでの生活でついたクセの改善に苦労されていましたが、2カ月も過ぎると慣れ始めたのか、こんなうれしい言葉をいただきました。

「友達は低音で声が小さいけど、補聴器で言葉が聞き取れて一番うれしかった。今は補聴器ないとだめね」

 聴力だけでなく諦めていた人生を取り戻すサポートもまた補聴器の大事な役割なのです。

田中智子

田中智子

シーメンスの補聴器部門でマーケティングの勤務を経て、2020年補聴器販売会社「うぐいすヘルスケア株式会社」設立。認定補聴器技能者資格保持。

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