科学が証明!ストレス解消法

オープンで外交的な人同士の会話はより良いアイデアを生み出す

雑談は「知識の資源」でもある
雑談は「知識の資源」でもある(C)日刊ゲンダイ

 人間は完璧な生き物ではありません。完璧を目指そうとすると、あれこれと考えてしまい、目の前にあるやるべきことにも手が止まってしまいます。それに、抱えている不安や心配が杞憂で終わることもあるでしょう。

 実際、ペンシルベニア大学のボルコヴェックらの研究(1999年)によると、心配事の79%は実際には起こらないことが明らかになっています。しかも、残りの21%のうち16%の出来事は、事前に準備をしていれば対処が可能ともボルコヴェックは説明しています。

 つまり、心配事が現実化するのはたった5%程度。もちろん、「不安や心配事は5%しか起こらないから安心です」とは言い切れません。しかし、不安のほとんどは現実には起こらない可能性が高いと考えると、心が軽くなりませんか?

 むしろ、不安を覚えているということは、「自分はきちんとできるかな?」という具合に、現状をしっかりと認識しているといえます。

 不安を覚えて当たり前です。完璧を目指す必要はなく、無駄があるくらいがちょうどいいのです。

 たとえば、無駄だと思われる雑談だって、インスピレーションやアイデアを与えるきっかけになります。私自身、酒席などの雑談から生まれた研究のヒントや仕事は枚挙にいとまがありません。お酒は飲めない自分が、飲みの席には這ってでも行くのは、一見無駄と思うようなものにこそ、発見があるからです。

 デューク大学のハサンとハーバード大学のコニングが会話と創造性の関係を調査(2019年)したところ、オープンで外交的な人同士の会話は、より良いアイデアを生み出すことがわかりました。

 一方で、内気な人との会話はその逆で、平凡なアイデアしか浮かばず、さらには、外交的で良いアイデアを思いつくと思われている人でも、内向的な人と会話をすると、アイデアの創造性がもっとも低くなりました。つまり、内向的な人がクリエーティブな場面に参加すると、全体に悪影響を及ぼす可能性が高いことがわかったのです。

 イノベーティブな発想というのは、思いも寄らない要素の組み合わせで生まれるもの。ですから、雑談はある意味「知識の資源」でもありますし、雑談などを通して、ざっくばらんにいろいろな話をする中で、そういった資源同士が新たな結びつきを生み出すわけです。

 生きていくうえで、雑談は必要ないかもしれません。しかし、人間らしく生きていくためには雑談のような無駄が必要です。完璧を求めないということは、いかにして無駄を楽しむかとも言えるわけです。完璧を突き詰めていくと、余計な心配が生まれ(先述したように、その心配は取り越し苦労で終わる可能性が高い)、余白……言い換えれば余裕を生み出すスペースを奪ってしまいかねません。

 完璧を求めすぎないように!

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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