2022年のアメリカの夏は激動の季節でした。人工妊娠中絶が違憲という衝撃的な判断が下されたかと思うと、史上まれにみる激しいインフレに襲われました。
続いて秋には大統領選の次に重要な中間選挙が控えていますが、こちらも到底例年通りとは言い難い、異常事態となっています。
なぜなら今回の投票で有権者は、「経済か人工妊娠中絶か?」という非常に不条理な選択を強いられているからです。
以前のコラムにも書いたように、2016年の大統領選で保守共和党のトランプ候補は、中絶禁止を公約に掲げることでキリスト教右派に大挙して投票してもらい当選しました。任期中に圧倒的に保守化した最高裁が、中絶は違憲と判断した結果、アメリカ女性の3人に1人は、合法的な中絶を受けられない窮地に追い込まれています。
こうした状況に対し今回の選挙は、国民の真意を問う初めての投票でもあります。
リベラル民主党は「共和党議員が増えればますます禁止の州が増える。絶対に当選させてはならない」と中絶を前面に押し出して選挙戦に挑んでいます。
一方日本以上に激しいインフレに襲われているアメリカでは、多くの人の生活がとても苦しくなっています。そのため共和党は「民主党もバイデン政権もインフレ問題を解決できない、全くダメだ。」と厳しく糾弾し、経済が大事なら共和党に投票しろとあおっています。
一体どちらが勝つのでしょうか?
深刻なインフレの中、当初は経済で戦う共和党が有利と考えられていました。
ところがそうではないかもしれない、という声も出始めています。そのきっかけが8月23日ニューヨーク州郊外で行われた、下院議員の補欠選挙です。
この地域は両党の勢力が拮抗する激戦区。ところが蓋を開けてみると、中絶擁護を掲げた民主党候補が、共和党候補にハッキリと差をつけて下しました。また投票を前に新たに有権者登録をしたのも、圧倒的に民主党支持の若い女性だったというのです。
「アメリカは経済より中絶を選ぶかもしれない」と、共和党がパニックに陥ったという報道もあるほどです。
最終的にどちらが勝つのか全くわかりませんが、まさにアメリカの未来を賭けた戦いから目が離せません。
ニューヨークからお届けします。