健康長寿に役立つ高齢薬膳

【松の実】「肺」の機能を高め潤いを与えて喉トラブルを改善

松の実のせ冷やし白うどん(提供写真)
松の実のせ冷やし白うどん(提供写真)

 コホコホと咳が続いてつらい……。朝晩の冷え込みや気温が変わりやすい秋口は喉のトラブルが増える季節です。

 年齢を重ねると呼吸器系機能も老化します。肺の呼吸に必要な胸郭と横隔膜の筋肉が衰えることで、その働きは低下していきます。肺胞の数が減って弾力性がなくなり、その周囲にある毛細血管も減ることから肺活量も低下。1秒間に吐き出す息の量も減るのです。

 さらに、気道から異物や細菌を吐き出す力も弱まり、1度ではなく何度も咳を繰り返す傾向も見られます。風邪をひいたことが原因で気管支炎になり、長く咳が続く「感染後咳嗽」、喘息の一種である「咳喘息」、鼻汁が気管に流れ込んで咳を引き起こす「副鼻腔気管支症候群」といった不調もシニアに多い呼吸器系トラブルです。

 長引く咳は体力の消耗につながり、睡眠など日常生活にも支障を来します。とくに体が弱っているときには、悪影響を及ぼすため早めに改善することが大切です。

 中医学においても、秋は喉のトラブルを引き起こしやすい季節とされています。空気が乾燥する秋は呼吸器系をつかさどる臓器「肺」が弱りやすいのです。肺は呼吸によって大気中のきれいな「気」を吸い込み、汚れた気を排出する働きがあります。この機能が弱ると咳、痰、喉の痛みといった症状を引き起こしやすくなるのです。

 肺は乾燥にとても弱い臓器。大気が乾燥する秋は、肺も乾燥して呼吸器系のトラブルが現れやすいのです。もともと肺が弱いタイプの人は、いよいよ悪化しがち。普段から喉が弱い、へんとうが腫れやすい、鼻の不調がある人は、肺が弱いので注意しましょう。

 喉のトラブルを改善するには、肺の機能を高め、潤いを与える食材を取り入れることが大切です。

 おすすめは松の実。「海松子」という名前の生薬としても使われ、肺の働きを強めるとともに潤いを与えて改善に役立ちます。とくに空咳に効果大。また、中国では古来「仙人の食」と呼ばれ、滋養強壮、老化防止によい食材。シニアには日常的に取り入れてもらいたい木の実でもあります。

 便秘の改善にも役立ち、女性にとってはうれしい美肌効果も絶大。その効能は「潤沢皮膚」。肌を潤わせてシワを消すとともに、ツヤを生み、顔色の悪さを解消してくれるのです。

 松の実は手軽に使えるのも魅力です。サラダや煮物、炒め物のトッピングとして使えば、料理のアクセントにもなりおいしくいただけます。

 松の実の喉のトラブルを改善する効果を高めるためには、同様の働きがある大根、白ごま、豆腐、豆乳などと組み合わせるとよいでしょう。また、喉にトラブルがあるときは、辛いものやスパイスが過剰に利いた刺激物は控えることも大切です。辛いものを食べるとすぐにせき込んでしまうことからもわかるように、肺を刺激して乾燥させ、症状が悪化するので気をつけましょう。

■松の実高齢薬膳レシピ

松の実のせ冷やし白うどん

 咳や喉の痛みを改善する松の実と、大根、白ごま、豆乳を組み合わせたレシピ。練りごま入りのコクのある豆乳ダレですが、大根おろしで後味スッキリ。松の実がアクセントになったおいしい薬膳うどんです。

【材料】2人分
●ゆでうどん  2玉
●大根おろし  大さじ4
●白すりごま  大さじ1
●松の実  大さじ2
●刻みネギ  適量
●タレ(豆乳=2カップ、練りごま=大さじ1、めんつゆ3倍濃縮=大さじ1.5、鶏がらスープ=小さじ1)

【作り方】 器にうどんを盛りつけ、大根おろしをのせる。混ぜ合わせたタレをかけて、白ごまをふり、松の実と刻みネギをちらす。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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