「肩凝り」は医学的病名ではありません。しかし日本人に頻度の高い体の悩みとして、世間一般から臨床の現場まで幅広く用いられています。
肩凝りは、症候性肩凝り、心因性肩凝り、そして本態性肩凝りの3つに分類されます。
症候性肩凝りは、首や肩といった整形外科領域以外に原因があることも。たとえば、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や頭痛、近視や乱視、眼精疲労などです。メニエール病や蓄膿症など耳鼻科領域の病気で肩凝りが生じていることもありますし、噛み合わせが悪いなど口腔内の問題や、更年期など婦人科疾患が隠れているケースもあります。
もともとの病気を優先的に治療することで、肩凝りの軽減も期待できますので、他に器質的な問題を疑う場合は速やかに適切な科を紹介します。
心因性肩凝りは、精神的なストレスなど心理社会的要因が密接に関与していると考えられるもの。肩凝りを訴える患者と健常者を比較した研究では、神経症傾向を有する、うつ状態が強い、仕事上のストレスがある、日常的に苛立ちを覚える人は、肩凝りを有意に覚えていた、との結果が出たそうです。心因性肩凝りでは、心身のリラクセーションやカウンセリングなどが治療法のひとつとして考えられます。
一方、本態性肩凝りは、レントゲンや血液検査では特別な所見がなく原因は明らかではないもの。普段の生活で起こる一般的な肩凝りは、大抵、本態性肩凝りに含まれます。
本態性肩凝りの問題は、病状があるのに、病院では異常なしと扱われてしまいやすい点です。湿布や痛み止めをもらう程度に終始しがちです。
その一方、凝りがひどすぎると吐き気やめまいなども起こし、気持ちが落ち込み、気がめいってしまうなどの「うつ状態」を生じることもあります。
本態性肩凝りは命にかかわりませんが、頻度が高いわりには積極的治療を受けられずに生活の質を著しく低下させることもある点では、より厄介です。
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