健康の「素朴な疑問」

お年寄りが早寝早起きになるのはなぜ? 基礎代謝の低下と関係

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

【Q】定年になったらゆっくり寝たい、と思っていたのですが、朝早くに目が覚めます。仕方がないので、早朝散歩するようにしています。最近は長く起きているせいか、夜早く寝るようになってしまい、楽しみにしていたテレビドラマに集中できなくなりました。なぜなのでしょうか?

【A】年を取ると元気な高齢者でも睡眠が浅くなり、夜中に起きたり、朝早く目が覚めたりします。理由のひとつは、加齢により体内時計が変化するからです。ヒトは地球の自転によって24時間周期で昼と夜が来るのに合わせて体内環境を変化させる仕組みがあります。

 実際、体温やホルモン分泌などは約24時間のリズムを刻みます。これを概日リズムといい、それをつかさどる機構を体内時計といいます。年を取るとこの体内時計が変化して、血圧や体温やホルモン分泌といった睡眠を支える生体機能の周期が前倒しになります。その結果、朝早くに起きるようになると考えられています。

 2つ目の理由は睡眠が浅くなるためです。睡眠は深いノンレム睡眠と浅いレム睡眠がありますが、年を取るとノンレム睡眠が減少してレム睡眠が増えることが脳波の測定などでわかっています。つまり、お年寄りは睡眠中でもちょっとした物音で起きてしまうのです。

 では、なぜ、年を取ると睡眠が浅くなるのでしょうか?それは年を取ると基礎代謝が減るからです。基礎代謝とは呼吸や体温など生きていくうえで欠かすことのできない必要最小限のエネルギー消費量をいい、睡眠時間と相関関係にあることがわかっています。若い人の睡眠時間がお年寄りよりも長いのは基礎代謝が高いからです。

 ですから、お年寄りがよく眠れないのは“日常の活動量が少ない”からというよりも、筋肉量が減るなどして基礎代謝が落ちるからです。ならば、筋トレをして筋肉をつけて基礎代謝を上げれば若い頃のように眠れるかといえば必ずしもそうではありません。

 そもそもお年寄りは筋肉が簡単にはつきませんし、基礎代謝は筋肉だけで決まるものではありません。ただし、睡眠時間が長くなることはありませんが、深い良い眠りができるようになるでしょう。

 また、質問者の方は、夜早く寝るようになったのは朝早くから動くために活動時間が長くなって疲れるからと思っているようですが、むしろ問題は太陽光です。

 ご存じのように屋外の強い光は、24時間より少し長い周期で刻まれている人の生体リズムを、24時間リズムにリセットする働きがあります。早朝散歩をすることはそれだけ早く、強烈な太陽を目の中に浴びて生体リズムがリセットされて1日が始まるのですから、そのぶんだけ眠気が早く来るというわけです。

 なお、「朝起きたら光を浴びて体内時計をリセットしましょう」というのは若者へのアドバイスです。若者は夜遅くまでスマホを見るなど夜に光を浴びることが多く夜型生活になっているからです。

(弘邦医院・林雅之院長)

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