科学が証明!ストレス解消法

同僚の顔がはっきり見えるオープンオフィスは生産性を低下させる

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 働き方は、日本で働くビジネスパーソンにとって大きなテーマではないでしょうか。欧米のように有休取得率が高くないわが国は、職場の環境や、コロナ禍によって促進した在宅テレワーク環境に、自分の労働力が左右されるケースが少なくありません。 

 2020年にエンフィールが公表した、新型コロナウイルス感染症の状況下における企業の在宅勤務状況とその健康状態、仕事への集中力などのパフォーマンスに関連する調査結果では、さまざまな問題が明らかになっています。たとえば、若年層においては、集中力やモチベーションの低下が見られたそうです。

 また、コミュニケーション機会の減少で、モチベーションも減少してしまう人が世代関係なく多く、必ずしもテレワークが日本社会に功を奏しているとは言いづらい状況も浮き彫りになっています。

 たしかに、家にいるとコミュニケーションの数は限られ、ふとしたアイデアを呼び起こすような同僚との雑談の機会も失われてしまいます。オンとオフの切り替えも難しいため、集中力が持続しづらいという声も後を絶ちません。

 最近では「やはり会社の方が仕事がはかどる」といった論調も大きくなってきています。どれだけテレワークが進んでも、職場(オフィス)環境をきちんと考えるという視点を、忘れてはならないと改め直している人が少なくないかもしれません。

 どのようなオフィス環境が望ましいかといえば、それは、風通しの良い環境でしょう。スムーズな上意下達は、組織を円滑にします。

 では、風通しを良くするために、お互いの姿を確認しやすいオープンオフィスにすると、仕事にプラスに働くのか? ハーバード大学の研究(2018年)によると、必ずしもオープンオフィスが効果的な職場環境をつくり出すとは限らないことが判明しているのです。

 この実験は、さまざまな人種が働く多国籍企業で行われ、技術、営業、人事、財務、製品開発などの各部門の社員やトップ、52人が参加したそうです。

 職場にある空間的、物理的な境界を取り払い、オープンオフィスをつくって交流が増えるのかを調べたところ、なんと!対面でやりとりをする時間が7割も減り、送るメールの量が2割から5割増え、さらにその文面の長さは2倍になるとの結果でした。つまり、生産性が低下したというわけです。

 オープンオフィスと聞くと、オープンな交流を促進するようなイメージを持ちますが、実態はそうとは限らない。実験では、オープンオフィスが“透明”な空間となり、被験者である社員がプライバシーを守るために周囲を気にしすぎる傾向にあったといいます。

 消極的になり、他者へのコンタクトをバーチャルな交流であるメールの文面に切り替えた結果、メールの量も内容も無駄に増えてしまった。これは、大変興味深いですよね。職場においても、個人を尊重する環境は大切。「風通しが良い=オープンなオフィス」ではないと、覚えておいてください。

◆本コラム待望の書籍化!2022年11月24日発売・予約受付中!
『不安』があなたを強くする 逆説のストレス対処法
堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円)

堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

関連記事