五十肩を徹底解剖する

心呼吸で胸郭を広げれば肩甲骨の機能が上がり五十肩の痛みにも◎

写真はイメージ
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 一見では原因がわからない五十肩には、肩甲骨の機能低下からくるものも少なくないと、前回お話ししました。この肩甲骨の機能について掘り下げてみます。

 胸背部の表面にあるあばら骨は、心臓や肺などの重要臓器をよろいのように守りながら呼吸をコントロールする役目をしており、これを胸郭といいます。

 背中に位置する大きな三角形をした肩甲骨は、その前面(胸側)がすき間に筋肉を挟んで胸郭とつながり、背中の上で羽のように動くことができます。この肩甲骨と胸郭の関係を肩甲胸郭関節と呼んでいます。

 バンザイをするときには、肩甲骨も背中の上で追随して動きます。その動きは二の腕の骨である上腕骨と肩甲骨までにとどまるわけではありません。肩甲骨が胸郭の上で滑らかに動くには、肩甲胸郭関節がしっかり機能してくれないといけないのです。つまり、胸郭の動きも大事になる。ですから、肩の痛みの原因を考えるときには、胸郭の柔軟性にも着目する必要があるのです。

 あばら骨は背面では背骨の一部分である胸椎とつながり、肋椎関節という関節を形成します。また、胸面ではネクタイのような形をした胸骨とつながり、胸肋関節をつくります。これらの関節も体をそらし、呼吸をするときには胸郭の一部として連動して動いているのです。

 また、肋椎関節がよく動くには胸椎の機能も重要です。胸椎は、もともと背中側に向かって曲線を描いていますが、加齢や姿勢不良などで胸椎の動きは硬くなりやすいからです。

 胸郭を動かす筋群は肩甲骨周囲だけでなく、上下に配列するあばら骨同士の間に走る肋間筋や、前面では胸部の筋肉などもあります。

 ネコ背やスマホ巻き肩では肩凝りを生じるだけでなく、胸椎は丸く固まり胸郭も縮こまるので、胸背部の筋肉は働かずに呼吸は浅くなりがちです。深呼吸を入れ胸郭を広げ胸背部の動きを出すことは、肩甲骨の機能が上がり五十肩にも良いのです。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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