科学が証明!ストレス解消法

人が多ければ多いほど何かあった際の「見て見ぬふり」が増える

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 デジタル上でコミュニケーションをとることが珍しくない昨今。

 読んでいるはずなのに返事がない「既読スルー」、そしてそもそも読みさえもしない「未読スルー」などは、誰もが一度は経験があると思います。

 また、複数から形成されているグループチャットやオンライン会議で誰からも反応がないと、「嫌われているのかな」「まずいことを言ったかな」と不安を抱いてしまう人もいるはず。しかし、それは単に、「傍観者効果」が働いている可能性があります。

「傍観者効果」とは、「自分がやらなくてもほかの誰かがやるだろう」と考えて行動しない心理的作用です。

 スーパーの棚から商品が落ちていたとしても、見て見ぬふりではないですが、片付けようと思わないのは、「自分がやらなくても誰かがやるだろう」という心理が働いているから。あるいは、会議で誰も意見を発しないのは、「誰かが何か言うだろう」という心理が働いているからです。

 ニューヨーク大学のダーリーとコロンビア大学のラタネが行った「傍観者効果」の実験(1968年)があります。

 実験では、議論をしているときに、突然別の参加者が発作を起こす緊急事態に、どういう行動をとるかを観察しました。参加人数の数によって行動に変化があるかどうかも調べたそうです。

 その結果、参加者が発作を起こしたとき、自分以外に誰かほかの人がいる状況では自己の責任感も薄れ、スタッフへの事故の連絡も遅くなる結果になりました。さらに、自分以外の人数が多くなれば多くなるほど、自分では動かなくなる傾向も判明しました。ほかに誰もいない状況では全員が連絡を行ったのに対し、ほかの人が4人いる状況では、なんと4割近くの人がスタッフに連絡をしなかったそうです。

 当コラムで以前、ドイツの心理学者・リンゲルマンが提唱した「社会的手抜き」(リンゲルマン効果)を紹介したことがあります。リンゲルマンは、綱引きを利用して実験(1913年)を行い、綱引きに参加する人数を徐々に増やし、どう力の入り具合が変わるかを調べました。すると、1人で綱引きをした際の力の入れ具合を100%とすると、2人の場合は93%に、3人の場合は85%に、8人の場合は1人当たり49%まで減少しました。

「誰かが何とかしてくれるだろう」という手抜きの心理が働くことを明らかにしたわけですが、「傍観者効果」も加味すると、人が多ければ多いほど、“見て見ぬふり”をする人は増えることを示唆しています。嫌われているから無反応というわけではないので、過度に気にする必要はないでしょう。

 その一方で、人が多いがゆえに、議論や反応が白熱しない可能性もあると言えます。だからこそ、ほかの人がやらなくても自分は動くという習慣を身につけたいものです。情けは人のためならず。そういう心遣いが、いつか巡り巡って、自分のところに良い形で返ってくるはずです。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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