タンパク質摂取のポイントは「アミノ酸スコア」と「朝」にあり

効率よく摂取すべき
効率よく摂取すべき(C)日刊ゲンダイ

 世はタンパク質ブームだ。タンパク質補給商品の市場規模は10年前と比べて3倍以上。中でもプロテイン商品の売り上げの伸びは顕著だ。ただ、タンパク質摂取について、正しく認識されていない傾向がある。

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「高齢者ほど、タンパク質の積極的な摂取が必要です」

 こう話すのは、「ひめのともみクリニック」の姫野友美院長。

 プロテインをはじめ、タンパク質というと、「筋肉ムキムキの人や運動している人が取るもの」という印象が強くないだろうか。そうなるのももっともで、プロテイン商品の機能別品目の比率をみると、筋力増強目的が半数以上だ。また、健康・ウエルネスに関するリサーチや情報発信などを行うウェルネス総合研究所が高齢者の対面調査を行ったところ、「プロテインは筋肉とスポーツのものという印象が強い」との結果が出た。

 しかしタンパク質は、高齢者の寝たきりや認知症対策において、非常に重要な存在なのだ。

 加齢とともに筋肉量は減少し、筋力も低下。これをサルコペニアというが、サルコペニアになると歩く、立ち上がるなどの日常生活の基本的な動作に支障が生じ、介護が必要になったり、転倒しやすくなったりする。サルコペニアは、高齢者の各種疾患に影響を与えることも報告されている。

 そもそもタンパク質の働きは筋肉を作るだけではない。疲労回復、睡眠の質向上、精神の安定、免疫力アップなど、実に多彩な働きをしている。

 姫野院長によれば、高齢者の場合、若者と同じ量のタンパク質摂取では不十分。というのも、細胞レベルにおいて骨格筋量のタンパク質は24時間常に合成と分解を続けており、タンパク質の合成速度が分解速度を上回ると筋量が増えるが--。

「若者と高齢者では合成速度が異なります。若者では1食0.24グラム(体重1キロにつき)のタンパク質の摂取で筋量が増えますが、高齢者では1食0.4グラム(同)のタンパク質を摂取しなくてはなりません」

■年を取るほど必要になる

 一般的に年を取ると、若い時と同じようには食べられなくなる。タンパク質を多く取るには、効率のよい摂取法を知っておくべきだ。

 まずチェックしたいのは、アミノ酸スコア。約20種類あるアミノ酸(タンパク質の原料)のうち、体内で作り出せない9種類の「必須アミノ酸」が必要量に応じてどれくらいの割合で食品に含まれているかを示したものになる。

「9種類の必須アミノ酸がそれぞれバランスよく含まれている食品ほど効率よくタンパク質を摂取できます。ある必須アミノ酸は突出して多いが、別の必須アミノ酸は少ない食品では、タンパク質の合成が悪くなります」

 同じタンパク質を取るにしても、アミノ酸スコアが高いものを選んだ方がいいのだ。アミノ酸スコアはインターネットなどで簡単に調べられる。アミノ酸スコアが高い食品としては、卵、牛肉(脂身なし)、豚肉(脂身なし)、鶏肉(皮なし)、イワシ、サケ、牛乳、ヨーグルト、豆腐、納豆、豆乳、ブロッコリー、ホウレン草、小松菜などがある。

「次に、動物性タンパク質と植物性タンパク質は2対1、肉と魚は1対1で取るよう心がけましょう。タンパク質全体のうち、動物性タンパク質の割合が50%未満になると平均寿命が短く、70%以上だと動脈硬化性疾患が増加します」

 朝昼晩どの時間帯でも十分にタンパク質を摂取できれば理想的だが、それが難しい場合、とにかく朝はタンパク質を多めに。朝昼晩それぞれのタンパク質摂取量と筋肉との関係を調べた研究では、夕方よりも朝に十分なタンパク質を摂取している群で、筋力が有意に高い値を示した。

「朝のタンパク質摂取は、筋体内時計やオートファジーを介して筋肥大促進作用を示します」

 姫野院長のある日の朝食は、食前にアミノ酸のサプリ、そしてタンパク質パウダー入り豆乳ヨーグルト、卵、肉類を入れたスープ、蒸し大豆を散らしたサラダ。これで1食につき20グラム以上のタンパク質になる。

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