科学が証明!ストレス解消法

リモート会議するなら1対1。大勢での問題解決は対面で

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 リモートワークの浸透で、「案外、直接会わなくてもできることがあるんだ」と思う機会が増えました。その一方で、「これはリモートでは難しい」というケースも明らかになりつつあります。

 私自身、リモートで授業を行う際は、とても苦労します。たとえば、「自宅はプライベートであるから顔出しを強制させてはいけない」という大学側のルールがあります。プライバシーの侵害に相当するため、「顔出しNG」を認めなければいけないのですが、学生がきちんと授業を受けているかがわからない。顔を出していない学生の中には、「すみません、今日の授業は寝ていて聞いていませんでした」と告白してきた子もいたくらいです。実際に顔を合わせられないことで、こうしたリモートだからこその弊害を感じる人は、たくさんいるのではないでしょうか。

 言葉による「情報伝達」を目的としたコミュニケーションであれば、リモート環境でも問題ないでしょう。しかし、「関係構築」や「複雑な問題解決」の作業には、リモートは不向きのようです。コミュニケーションを行う際、人間は言葉以外の情報(非言語情報)も重要な要素として認識しています。むしろ言葉より、表情や声のトーン、身ぶり手ぶりなどを使った非言語的なコミュニケーションのほうが、情報量が豊かといえるのです。

 また、1対1ならまだしも、多人数で行うミーティングやブレストがいまいち盛り上がらないのもリモートの難点ではないでしょうか。雑談は暖機運転よろしく、ほどよいコミュニケーションをつくり出すポイントになるのですが、リモートではそのような雰囲気になりづらい。

 また、オンラインは記録として残ってしまうため、おとなしくしていようという心理や傍観者効果が働きやすくなるという点も挙げられます。

 フロリダ大学のショーは、コミュニケーションの形態に関する先行研究を含めて概観する研究(1964年)を行っているのですが、多対多の形態では、①「課題の多角的な検討に優れている」②「複雑な課題の解決に向いている」③「参加者の士気・満足度が高い」といった点が優れていると明らかにしています。

 対して、リモート環境が得意としているのは1対1、あるいは1対多の関係による情報伝達です。これは1人の話し手が聞き手に対し一方的に話す、あるいは聞き手はただ聞くだけで成立するようなシチュエーションを意味します。しかし、ショーが示すように複雑な問題解決においては多対多の関係性が望ましい。なぜなら、クリエーティブな作業には、いろいろな人と複線的に話せるコミュニケーションがあった方がアイデアが豊かになり、思いもよらないアイデアが降ってくるからです。ところが、リモート環境ではこうした本来、多対多が持つ優越性を損なわさせてしまうため、大勢が集まっても複雑な問題解決(またはクリエーティブな作業)に向かないという現象が起こりうるわけです。

「リモートの時代になって助かっています」

 そんな声が聞こえる一方で、すべてのコミュニケーションがリモートで成立するとは限りません。何事も一長一短だと理解することが大切です。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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