Dr.中川 がんサバイバーの知恵

秋野暢子さんは疑問を投稿 がんのステージは進行度、では余命との関わりは?

秋野暢子さん
秋野暢子さん(C)日刊ゲンダイ

 皆さんは、どう思われるでしょうか。女優の秋野暢子さん(65)は18日、自らのブログにがんのステージにまつわる疑問を投稿。「頸部食道癌、下咽頭癌、ステージ1~3、リンパ転移が認められる」と診断を語った上で、「ドクターからステージを言われたとき、患者はどう理解すればいいのか? ステージって何!? ず~と謎なんです」と結んでいます。

 秋野さんも触れているように、ステージ1で早く亡くなる方も、ステージ4で長生きされる方もいて、そこに余命宣告が重なると、同じように思う人は少なくないでしょう。

 ステージは0~4までの5段階で、数字が大きくなるほどがんが進行した状態です。がんが周りの組織に広がっていくことを、医学用語で浸潤といい、早期とは浸潤していない状態を指しています。

 具体的には、食道がんや大腸がんなど粘膜から発生して粘膜下層、筋層へとより深くに伸びていくタイプでは、粘膜にとどまっているか粘膜下層までの状態が早期で、ステージ0か1。筋層より深くに浸潤しているステージ2から進行がんとなります。ほかの臓器に転移した状態が、ステージ4です。

 国立がん研究センターは2020年、全国がんセンター協議会に加盟する32施設の14万2947例を対象に5年生存率を公表。全部位・全病期では68.4%でした。

 部位別にみると、胃がんのステージ1は97.2%ですが、ステージ2で62.8%に低下。ステージ3では49.0%に下がり、ステージ4で7.1%と10%を下回っています。大腸がんのステージ1は98.8%で、ステージ2は90.3%に低下。ステージ3は83.8%、ステージ4は23.1%とほかのがんほど悪くありません。

 一方、肝臓がんは数値が悪く、ステージ1で62.3%。ステージ2で37.3%だったのがステージ3では14.8%にダウンし、ステージ4では0.9%です。

 早期といわれるステージ1でも、がんによって5年生存率の違いが大きいことが分かります。共通するのは進行するほど数値が下がること。どんながんであれ、なるべくステージ1までに見つけて治療するのが、がん治療医が勧める上手ながんとのつき合い方といえます。

 告知をどこまでするかは微妙な問題ですが、認知症の方は別として、がんと診断されればステージは伝えなければならないでしょう。ただし、余命については、参考程度でいいと思います。

 余命の基になる研究結果には、かなりバラつきがあるため、中央値を採用します。たとえば、食道がんで抗がん剤と放射線で治療した37人では、1カ月~3年で、その中央値は9カ月ほど。ほとんどアテにはなりません。

 余命との関わりにおいても、やっぱり早期発見に尽きます。そのためには毎年の健診が大切。あるとき、仕事の都合で受けられなかったら「また来年」ではなく、すぐに予約を取り直すこと。進行の速いがんでは2年のブランクが命取りになることがあるのです。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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