五十肩を徹底解剖する

お尻を締めてお腹をへこませ胸を開くことが痛み解消の第一歩に

原因は「肩」ではないケースも…
原因は「肩」ではないケースも…

 五十肩の原因は「肩」そのものにはないケースが多々あることを、これまで話してきました。

 私たち人間は、寝ている時以外、平均5~8キロある頭部を首の上にのせています。これは、体重の約10%を占めます。

 ボウリングの球のような頭部を支えるため、立位時の重心は体の中心を通ります。横から見ると重心線は耳→肩→股関節→膝→足関節となります。

 この重心線が崩れる原因のひとつに、上半身と下半身をつなぐ骨盤の乱れがあります。

 骨盤は、体を横から見た時に約12度前傾しているといわれています。12度を超えて前傾が増すと反り腰になり、脊椎のS字カーブが乱れます。逆に12度を下回ると骨盤は後傾になり、重心が後ろにずれ、猫背になってしまいます。

 このように肩甲骨、胸郭、脊椎、体幹、骨盤の動きは相互に関連しています。だとすると、股関節や膝など下半身の痛みや衰えでも骨盤の傾きは乱れ、しまいには肩の痛みを誘発するかもしれません。

 骨盤が傾く理由で多いのが、お尻の筋力の低下。本来、お尻は大きな力を発揮し、姿勢の保持や動作の起点となる働きをします。お尻の筋力が低下すると正しい姿勢や動作ができなくなるのです。

 また、太ももの柔軟性が落ちても、股関節の可動域に影響を与え、骨盤の傾きが乱れます。

 つまりは、お尻や下半身の筋肉を鍛え、柔軟性を上げることは骨盤の傾きを正すことになります。

 ですから、中高年の肩の痛みの中でも、加齢や生活習慣からの「体の衰え、バランスの乱れから生じた機能的な肩の障害」を治すには、肩から離れた骨盤から体幹、脊柱、胸郭、肩甲骨に注目し、積極的に動かしていくことが大事です。

 まずは普段からお尻を締めて、お腹を少しへこませて胸を開く意識を持つ。これだけでも、五十肩を治療する第一歩を踏み出すことになるのです。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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