科学が証明!ストレス解消法

日常生活の思考における約12%が「自分自身に関する比較」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 この連載でも簡単に触れた、米スタンフォード大学のフェスティンガーによる「社会的比較」という理論があります。人は正しく自己評価するために、誰かと比べたがるという理論ですが、フェスティンガーは、人が社会に適応していくには自分の置かれている状況や環境をよく知っていることが必要であると指摘しています。周りの環境の中で自分の立ち位置を明確に理解するためには、周りと比較してしまう。これは、社会で生きていく上で、自分がどんな存在なのかを知っておいた方が何かと都合がいいということでもあります。

 人間がこうした比較をするようになった理由を、ロンドンビジネススクールのムスワイラーらは、このように説明しています。

「比べた方が認知効率が良いから」

 とても端的に人間という生き物を表した一言でしょう。たとえば、自分の身体能力が高いのか、低いのかを知りたければ、スポーツテストの結果を見れば一目瞭然ですよね。どれくらい頭が良いのかを知ろうとしたとき、誰もが出身校の偏差値を調べるのも認知効率が良いからです。

 もしもスポーツテストや学力テストなどがなければ、簡単に(身体能力や学力において)自分がどれくらいの存在なのかを把握することは難しいはずです。膨大な情報をリサーチして処理をしないといけませんから、客観的な指標の割り出し自体に時間がかかってしまいます。

 人間というのは基本的に面倒くさがりです。よく言えば、効率主義。省エネで判断するために、社会的比較を行うというわけです。そのため、スポーツテストや学力テストといったわかりやすい指標が世の中にはたくさんあるのです。

 また、次のような興味深い「比較」に関する研究もあります。

 米マイアミ大学のサマービルらによる研究(2008年)では、日常生活の思考における約12%が「自分自身に関する比較」だそうです。その中でも「自分と他人を比較する」が4分の1を占めていることがわかりました。日常的に人間は自分を何かと比べ、さらには他者と自分を比較してしまう──。そもそもの大前提として、「自分と他人を比較してしまう」ことを受け入れてみるといいかもしれません。最初から「どうせ比べてしまうんだから」と割り切れば、もしも「劣等感」や「焦燥感」などが生まれても、冷静に向き合い、対処しやすくなるのではないでしょうか。

 比較をすると、何かしらの差異が生じてしまいます。Aという商品とBという商品を比べると、お互いの商品に良いところ(優れているところ)と悪いところ(劣るところ)が見つかります。「私」と「誰か」に関しても同じでしょう。人間は、ネガティビティーバイアスによって、悪い点を気にしてしまいますが、勝っている点もある。ですから、比較したときに、ネガティブな情報だけを受け取らないことも大事なのです。

 人間は、ある意味では比較なしでは生きていけない生き物なのかもしれません。だからこそ、比較によって生じた差異とどのように向き合うかが大切です。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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