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より良い認知症の介護施設を見極める方法 抜き打ち見学がおすすめ

施設の見学は抜き打ちで
施設の見学は抜き打ちで

 家族が認知症を発症し、自宅での介護が難しくなると、老人ホームや介護施設への入居を検討することになります。これらの施設は運営主体や目的、入居条件などの違いによって種類が異なります。

 大きく2つに分かれ、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)といった社会福祉法人や自治体が運営する公共型施設、介護付き有料老人ホームやグループホームといった民間型施設があります。

 特養の場合、要介護度3以上の身体介護や日常的な生活支援を必要とする患者さんを優先で預かります。入居一時金や初期費用などがないケースも多いですが、順番は申し込み順ではなく緊急度によって決まります。常に満室で待機しているご家族がたくさんいますので3カ月から半年以上待たなければならない可能性はあります。

 老健は入院したばかりで在宅生活が難しい方(要介護1以上)を対象にしています。いずれは自宅での生活を目指しているので、長くても半年程度しか滞在できません。

 一方、グループホームは、要支援2以上で原則65歳以上の認知症患者で共同生活が可能な方が対象になります。民間企業が運営していますから、探せばすぐに入れる施設は見つかりますが、家賃やサービス費用など予算は異なります。

 それではどんな施設を選ぶべきでしょうか。特養や老健の利用を考えている方は基本的に要介護度が高く、病気を抱えていたりしますので、患者さんが急変することがあります。できるだけ、自宅や職場に近いエリアから選びたいところです。

 施設の選び方は、まずは口コミサイトやホームページを検索し、母体となる企業や組織を調べます。大企業の傘下であれば何かあった時に補償を求めることができますし、経営業態を知ることは大切です。次に施設の見学をしましょう。できれば、「近くまで来ていますが」「今日なら空いています」といったように抜き打ちで訪問するのがおすすめです。本当に忙しくて対応できない場合もありますが、スタッフの対応や現場の実際の環境を見ることができます。

 チェック項目は、①掃除が行き届いているか。窓の縁や共有部分のテレビにホコリがたまっていないか、通路は車椅子が十分通れる広さがあるか、緑があるかは見ておきたいです。②掲示物が曲がっていないか。画びょうがハズレていたり、何年も前のイベントの写真が貼ったままなら、細かな点に気づくスタッフがいない、またはスタッフに余裕がない証拠です。管理者の目が行き届いていない施設の可能性があります。③食事は外注か、自社のキッチンで作っているか。管理栄養士が在住する施設もあります。患者さんが口にするものは知っておきたいです。④介護スタッフの数を確認。国の定める基準としては、患者さん3人に対して介護スタッフ1人以上。これは抜き打ち見学すると実態が把握しやすい。⑤特養などの場合は提携先の医療機関を調べておきましょう。いざという時に大きい病院に搬送してもらえるのか、どんな経歴の先生が診てくれているのかを知るだけで安心できます。

▽永澤守(ながさわ・まもる) 2002年3月福井医科大学(現・福井大学医学部)卒業。美濃市立美濃病院内科、東京さくら病院および同認知症疾患センターなどの勤務を経て、現在はかつしかキュアクリニック院長。

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