五十肩を徹底解剖する

肩から遠い膝や足に問題が起きて肩関節に影響が出ることも

(筆者提供)
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 1カ月に及ぶサッカーW杯もいよいよ終了しました。熱戦の連続で寝不足になった方も多いかと思います。

 サッカーは攻撃を主とする選手と守備を主とする選手でチームが構成されます。そして概して強いチームは攻めと守りのバランスがよいものです。

 同様に、人体を構築する体の各関節には動くことが得意な関節と、体を安定させることが得意な関節があります。

 この可動性関節と安定性関節は、実は体に交互に配列されています。

 そして、可動性関節が自在に動くにはその両側に隣接する安定性関節がしっかりと支える必要があるのです。

 攻撃の選手が躍動できるのは守備の選手が万全だからこそチームが機能するのですね。逆に一人でも手を抜くと、他の選手がカバーしなければならなくなって連動性にほころびが出るのがチームです。

 ここで、体というチームをもとに肩の動きを考えてみます。たとえば可動性関節である股関節が硬くなってしまいました。本来、安定性関節である腰椎は、股関節が動かないのをカバーして無理に動こうとします。すると腰椎の上にある可動性関節である胸椎は、腰椎が安定しないのをカバーして無理に固まろうとします。

 次は、肩甲胸郭関節、肩関節……と仕事を押し付けられ負担がたまり、ついには痛みにつながってしまいます。たとえ遠くの膝や足に問題が起きても、肩関節に影響が出ることがあるのです。

 今回は、動くべきところはストレッチして柔らかく、安定すべきところは鍛えるトレーニングをまとめた動画(https://youtube.com/@user-dx6sn9kp8d)を紹介します。

 遠回りでも全身の協調運動を高めていくことが、結局は五十肩を克服することにつながるのですね。

 本稿は、山手クリニック・五十嵐郁弥先生からご指導いただきました。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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