高齢者の正しいクスリとの付き合い方

クスリをたくさん使っている人は「胃薬」を処方されているケースが多い

写真はイメージ
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 高齢になり、使っているクスリの種類が増えていくと、その中に「胃薬」が含まれている方も多いのではないでしょうか。一言で胃薬と言っても、大まかに「胃の防御力を高めてくれるクスリ」と「胃を攻撃する胃酸を少なくするクスリ」に分類されます。

 胃には、食べ物をためておくプールとしての役割と、食べ物を消化する役割があります。他にもいくつか役割があるのですが、この2つが代表的なものです。食べ物を消化する際には「胃酸」が必要です。それが、何らかの理由によってその影響が強く出てしまうと胃炎の原因になりますし、さらにひどくなると胃潰瘍の原因にもなってしまいます。

 そうしたことが起こらないようにするために胃薬が用いられます。また、クスリは胃に負担をかけることが多いので、クスリのせいで胃潰瘍になってしまうケースを防ぐためにも、特にクスリをたくさん使っている場合には、胃薬も一緒に処方されることが多いのです。

「胃の防御力を高めるクスリ」は、胃の粘膜を増やす効果を持っています。胃の粘膜が少なくなると胃自体が胃酸によってダメージを受けてしまうため、クスリの力で粘膜を増やして胃酸から胃を守ることを目的としています。一部の痛み止めのクスリは、副作用として胃の粘膜を減らしてしまい、結果として胃潰瘍の原因となる場合があります。そのため、特にそういったクスリが用いられるときには、胃の防御力を高めるクスリが一緒に出されることが多いです。

 一般的に、胃の防御力を高めるクスリの作用は比較的マイルドですが、副作用も少なめなので安全に使えると考えていただいて結構です。また、こういったクスリの多くは作用時間が短めなので、1日に2~3回服用する必要があります。

「胃酸を少なくするクスリ」は、文字通り胃酸の分泌を減らすことで胃酸から胃を守るクスリになります。胃の粘膜が十分にあったとしても、それ以上に胃酸が出ている場合(いわゆる胃酸過多)は、やはり胃そのものが胃酸によってダメージを受けてしまいます。

 現在、病院で処方される胃薬の主流はこちらであると言ってよいでしょう。胃酸を少なくするクスリの作用は強力で、胃をしっかり守ってくれるからです。たとえば、以前にもお話ししたことがある血をサラサラにするクスリ(抗凝固薬)を使っていて、万が一、胃潰瘍を起こしてしまうと大出血につながる危険があります。そのため該当する患者さんには、ほぼもれなく胃酸を少なくするクスリも一緒に処方され、胃潰瘍が起こらないように予防されています。

 このように、胃薬はとても重要なものです。ただ、胃薬を使うデメリットはないのでしょうか? 次回、詳しくお話しします。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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