高齢者の正しいクスリとの付き合い方

投与量の調節が大ざっぱな経口糖尿病薬は低血糖を起こしやすい

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 誤解を恐れずに言うと、「低血糖」は一度経験しておいたほうが良いかもしれません。それも入院(糖尿病の教育入院)中がベストです。自分がどのような症状を起こすかの傾向がわかることで将来的に対処しやすくなりますし、入院中であればすぐ近くに医療スタッフがいるのでより安心です。

 糖尿病のクスリには経口糖尿病薬とインスリンがありますが、低血糖を起こしやすいのはどちらでしょう? 意外に思われるかもしれませんが、低血糖を起こしやすいのは経口糖尿病薬なのです。

 経口糖尿病薬の量を調節するときは、だいたい「1錠」や「2錠」といった感じで行うのですが、実はこれ結構大ざっぱな調節です。たとえば、1錠あたりクスリの成分が50ミリグラム含まれているとすると、2錠にすると100ミリグラムまで増えることになります。

 それに対し、インスリンは1単位(単位:インスリンの量を表します)ずつ非常に細やかな調節が可能で、しかも朝・昼・夜それぞれに最適な単位数の設定ができます。インスリンは注射しなければいけないため、あまり良い印象を持っていない方も多くいらっしゃるかと思いますが、実際は経口糖尿病薬に比べて低血糖を起こすリスクが低く、体の調子に合わせて量をぴったり合わせられるクスリなのです。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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