老親・家族 在宅での看取り方

時には病院で検査を受けながら、日常は自宅で過ごすケースも

簡単な検査なら在宅医療でもできるが
簡単な検査なら在宅医療でもできるが

 在宅医療を始められる患者さんの中には、一時的に入院するレスパイト入院とは別に、大がかりな検査のための通院も並行して行う方もいらっしゃいます。

 その場合でも、もちろん私たちはその患者さんの事情に合わせ、できるだけきめ細かくサポートさせていただきます。それができるのも、ひとえにさまざまなスタッフがチームとなって対処しているからです。当院ではそんなチームをラインと呼んでいます。

 ラインには、看護師や言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、救命救急士、管理栄養士や車の運転ができるバックオフィスの要員といったさまざまなスタッフが携わっており、それらを私たちは「診療パートナー」と呼んでいます。そしてその診療パートナーを、患者さんの療養の状況に、柔軟にパズルのように組み合わせることにより初めて自宅における患者さんのQOLの維持向上を図ることができると考えています。

 奥さまと2人暮らしの、要介護2の75歳になる男性。高血圧と高脂血症からアテローム血栓性脳梗塞を起こし、右足に障害があります。アテローム血栓性脳梗塞は、脳血管内にコレステロールなどの塊ができて血流が悪化し、そこに血栓ができて血管が閉塞する病気です。

 昨年の年末に発熱。コロナ陽性との診断を受け、いったんは回復されましたが、それ以降発熱を繰り返し、不自由な右足もあることから頻繁な通院は困難になり、在宅医療を開始されたのでした。

 この方の場合、不自由となった右足のリハビリも自宅で行うことになりました。リハビリを在宅医療でも行えることを意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、在宅でのリハビリは実際の生活環境に沿った訓練がリラックスした状態で行えることから、最近は高齢者のQOLを高める観点からも注目されているのです。

 ちなみにそのリハビリには理学療法士が当たり、運動や体操、さらにはマッサージなどによって日常生活に必要な体の基本動作の維持・回復を目指します。

「なにかお困りのことはありますか?」(私)

「熱が上がったり下がったりで、12月の時には痰があって病院で診てもらったら胸にも痰がありそうだって」(妻)

 簡単な検査なら在宅医療でも行うことができますが、もっと精密にCT検査を受けるため病院に行った患者さん。

「土曜日にB病院で検査してCTとかも撮ったんですが、下の方に少し影があるけど大したことないって」(妻)

「脳梗塞をやっていますから痰が下にたまりやすく、ずっと炎症があるんだと思います。もしお熱が続くのであれば抗生剤を飲んでもいいんじゃないかなって思います」(私)

「また土曜日に病院で結果を聞いてきますので」(妻)

「では、ひとまずこのままでいきましょう」(私)

 患者さんやご家族が安心できるなら在宅にこだわらず、一番いい方法を共に模索することも在宅医療の大切な役割なのです。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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