健康長寿に役立つ高齢薬膳

【カボチャ】「脾」を力づけて「気」を補い胃の不調を改善

(提供写真)
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 食べるとすぐにお腹がいっぱいになる、胃もたれする……。胃の不調の原因になりやすいのが「胃下垂」です。胃が正常な位置より下がっている状態のことをいいます。重症化した場合、骨盤のあたりまで落下する場合もあります。

 食べるとすぐ満腹感があったり、下腹部が膨らむといった特徴があり、食後に胃もたれ、吐き気、消化不良、少量の食事でも腹部膨満感が続いたり、下痢や便秘といった症状があります。

 原因は胃を支える筋肉の低下とされ、筋力が衰えるシニアに多く見られる傾向があります。命に関わる疾患ではありませんが、胃の不調は食事に悪影響を及ぼします。

 栄養状態の向上が重要なシニアにとって、胃のコンディションを整えることは重要です。改善を図り、健康長寿を目指しましょう。

 中医学において胃下垂は、「脾」の働きが低下したことによって引き起こされると考えます。脾は飲食物の消化、吸収をつかさどる臓器です。そして、脾と表裏一体の関係にあるのが胃になります。よって、脾の不調は胃に伝わってトラブルを引き起こしてしまうのです。

 脾には内臓や皮膚を本来あるべき位置から下げないように維持する働きがあります。この働きが衰えると、胃下垂になりやすいのです。そのほかにも脱肛、顔のたるみ、下半身が太りやすいという特徴も見られます。

 脾には、取り込んだ栄養を人間のエネルギー源である「気」に変えて、全身に送る働きがあります。いわば生命力の要ともいえる臓器なのです。生きる土台でもある脾が弱ると、疲れやすい、だるい、やる気が出ないと“脾弱”な状態に陥りがち。免疫力も低下します。パワフルに毎日を過ごすためにも、脾の働きを高めることは大切なのです。

 脾の機能をアップするためにおすすめなのがカボチャ。脾を力づけ、気を補う働きに優れています。また、体の末端の血流に作用して全身を温める効果も高く、いまの季節にぜひ取り入れたい食材です。冷えによる便秘改善にも役立ちます。また、女性にとっては肌の弾力をアップしてたるみを改善するうれしい美容効果も。ワタの部分にも薬効が多く含まれているので、できれば食べるようにするのがおすすめです。

 カボチャの胃下垂改善効果を高めるためには、同様に脾を強める作用があるキノコ類、豆類、ブロッコリーなどと組み合わせるとよいでしょう。 (水曜掲載)

 脾の働きを強める、カボチャ、豆、キノコを組み合わせたレシピ。市販のカボチャサラダ、ミックスビーンズ、マッシュルームの水煮でお手軽に完成。食感も楽しく食べ応え十分のサラダです。

■カボチャ薬膳レシピ

パワフルパンプキンサラダ

【材料】2人分

●カボチャのサラダ(市販)  180グラム
●ミックスビーンズ  100グラム
●マッシュルームの水煮(スライス)  100グラム

【作り方】

 ボウルにカボチャのサラダ、ミックスビーンズ、マッシュルームを入れて、混ぜ合わせる。味が足りないときは、塩、コショウを加えて調える。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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