トイレのたびに痛みがひどい。しょっちゅう尿意を感じる……。年齢を重ねるごとに発症しやすくなる「尿路感染症」。膀胱炎や前立腺炎など、腎臓から尿道までの尿路に起こる感染症の総称です。本来は無菌である尿路の中に細菌が入ることで、炎症が生じます。おおむね、大腸菌などの腸内細菌が、尿道口から逆行して侵入することが原因で引き起こされます。
加齢によって免疫力は低下します。そのためシニアは感染するリスクが高くなってしまうのです。症状としては排尿時痛、頻尿、残尿感、尿が出にくい、発熱などがみられます。生活の質を下げるだけではなく、症状が慢性化して再発を繰り返したり、悪化して腎盂腎炎になる場合もあります。早めに食事でも対策を講じましょう。
中医学において、尿や膀胱のトラブルは「湿熱」が原因と考えます。湿熱とは、体内の余分な水分である「水湿」が、熱を帯びた状態の物質のこと。湿熱が膀胱に侵入することで不快な症状が引き起こされるのです。
また、泌尿器系をつかさどる臓器「腎」の働きが低下することも尿路感染症の原因となります。腎の働きによって、体内の不要な水分は尿として外に排泄されるため膀胱に送られます。加齢によって腎の機能は衰えるため、膀胱の機能も低下してしまうことで、症状が現れやすくなるのです。
改善のためには、熱を鎮め、利尿作用の高い食材を取り入れること、そして腎の機能を高めることがポイントになります。
おすすめはワカメ。体内の余分な熱を冷ますとともに、過剰になった水分を排出する効果が高いのです。また、腎の働きを高める効能も大。まさに、尿路感染症対策にうってつけといえる食材です。
ワカメは老化によるトラブル全般に役立つほか、むくみ改善にもおすすめです。また、体内の“しこり”を柔らかくする働きもあり、便秘にも効果的。しこりを柔らかくするという意味において、できもの、腫瘍、肩こりの改善にも役立ちます。
ワカメの尿路感染症改善の効果を高めるには、同様に身体の熱を下げて、水分を排出する効果の高いキュウリを組み合わせるのがおすすめ。さらに、免疫力をアップして早期改善を図るために、人間のエネルギー源である「気」を補う鶏肉、ナガイモをプラスするとより効果的です。 (水曜掲載)
■ワカメ高齢薬膳レシピ
ワカメと鶏肉、たたき野菜の丼
体内の余分な熱を鎮め、水分を排出するワカメとキュウリ、免疫力を高める鶏肉とナガイモを組み合わせた丼。鶏肉はサラダチキンを利用し、ナガイモとキュウリはたたいて調理すれば手軽に完成します。ごま油の風味で、食が進む一品です。
【材料】2人分
●ワカメ(乾燥) 10グラム
●サラダチキン 40グラム
●ナガイモ 6センチ
●キュウリ 1本
●ごはん 丼2杯分
●タレ(めんつゆ・大さじ3、ごま油・大さじ1、ニンニクのすりおろし・少々)
【作り方】
ナガイモは皮をむき、キュウリはそのまますりこぎなどでたたく。水で戻したワカメ、ほぐしたサラダチキンとともに丼に盛ったごはんの上にのせる。タレをかけて食べる。
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