「熱中症」 絶対押さえたい対策法 梅雨の合間や明けがハイリスク

熱中症は梅雨明け後1週間くらいがリスクが高い
熱中症は梅雨明け後1週間くらいがリスクが高い

「梅雨の合間や梅雨明けは熱中症のリスクが非常に高い。しっかり対策を講じるべき」

 こう言うのは、「いのちを守る水分補給 熱中症・脱水症はこうして防ぐ」などの著書がある神奈川県済生会横浜市東部病院患者支援センター長・栄養部部長の谷口英喜医師だ。

 気温自体は8月の方が高いが、熱中症については、梅雨の合間や梅雨明け、特に梅雨明け後1週間くらいが、リスクが非常に高い。

「人間の体には暑熱順化という機能が備わっています。暑さに慣れるに従い、暑さに強くなっていくわけです。しかし梅雨の合間や梅雨明けでは、暑熱順化がまだできていない。暑さに弱く、熱中症になりやすい」(谷口医師=以下同)

 今年の7~9月は平年並み、または平年以上の暑さだと予測されている。加えて谷口医師は、コロナの影響も指摘する。

「テレワークや行動自粛による筋力低下です。筋肉には水分を蓄える働きがある。筋肉量が少ない人は、体質的に熱中症になりやすい」

「運動習慣がない」「テレワークでほぼ自宅」「デスクワーク中心」といった人は要注意だ。タレントの所ジョージさんが2010年夏、熱中症を起こした時の様子を経口補水液の商品のCMで次のように語っていた。

「気がついた時にはもう頭がクラクラして、ドバーッと汗が出て止まらなくなって、手足にも力が入らなかった」

 熱中症の症状は突然やってくる。「自分は大丈夫」との思い込みは、危険だ。

「救急搬送されるほどの重症度になれば命の危険があります。熱中症のダメージを特に受けやすい臓器は、脳、消化器、筋肉ですが、その中で脳細胞は死滅してしまえば、治療で元に戻せません。だから、重要なのは予防。熱中症のリスクをゼロにはできないが、予防はできる病気なのです」

こまめな水分補給が肝心
こまめな水分補給が肝心
必要に応じて暑熱環境から逃げる

 熱中症の予防は、「暑熱環境」と「脱水症」の2つをブロックすることに尽きる。

「体温コントロール不良による高体温症で熱中症を発症する。しかしそこへ至る前に2つの段階があります。暑い・蒸し暑いという暑熱環境があり、そこから大汗をかいて脱水症状を起こし、“水不足”から汗や皮膚からの放熱ができなくなって、高体温症になる。だから、暑熱環境から逃げる、そして脱水症を起こさないことが、熱中症予防になるのです」

■暑熱環境から逃げる

「今日は暑い」と思っていても、作業に没頭するうちに暑さを忘れてしまうことがある。また子供や認知機能の低下した高齢者では、暑さが意識の外にいってしまいがち。客観的な数値を参考に、必要に応じて暑熱環境から逃げるようにする。

「温度だけでなく湿度も熱中症のリスクに関係します。『蒸し+暑い』の程度を示す暑さ指数(WBGT)や熱中指数が環境省の『熱中症予防情報サイト』で公表されるので、それを確認する」

 WBGTなどが高ければ、屋外での作業は極力避け、冷房の効いた屋内で過ごすようにしよう。

■脱水症を起こさない

 こまめな水分補給が肝心だ。1日8回が目安。持病で水分摂取に制限がかかっている人は、事前に主治医にどれくらいまで水分摂取が可能かを、確認しておく。そして見落としがちなのが、食事から入ってくる水分だ。

「毎日の水分バランスとして、体重60キロの人では、体に入る水分が2500ミリリットル、出る水分が2500ミリリットルといわれています。体に入る水分のうち、食べ物から入るのが1000ミリリットルです。食事からいかに水分を取るか。夏野菜や果物は水分量が多い。かつ、熱中症予防に役立つビタミン、ミネラルも豊富です」

 暑くて食欲がない……と食事を抜くと、それだけ体に入る水分が減る。1日3食の規則正しい食事を。どうしても無理なら、キウイ、スイカ、トマト、キュウリなどの果物や野菜を食べる。間食で補給するのもいい。

 ポストコロナで迎える夏。思いっきり楽しむためにも、熱中症対策を万全に。

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