服装にこだわる人と、まったくこだわらない人がいます。「自分の好きな服を着るとモチベーションが上がる」。おそらく前者の多くが、こうした理由からファッションに関心を寄せていると思うのですが、ノースウエスタン大学のアダムとガリンスキーは、服装がどのような心理的影響をもたらすか、次のような実験(2012年)を行っています。
まず、被験者を2つのグループに分け、Aグループには白衣を着用させ、もうひとつのBグループには普段着を着用してもらいました。その上で、「ストループテスト」と呼ばれるテストを行いました。
「ストループテスト」とは、“REDと書かれたホワイトの文字”のように、色の単語と実際に書かれている文字の色が異なるワードを被験者に見せ、被験者は文字の色を瞬時に読み上げるというものです(先の例でいえば“ホワイト”が正解)。
その結果、白衣を着たAグループの方が良い成績を収め、驚くことにBグループよりもミスの数が約半分だったといいます。アダムとガリンスキーは、こうした効果を「Enclothed Cognition(エンクロースドコグニション)」と呼び、服装のイメージが私たちの考え方や感じ方に影響を与える可能性があると指摘しています。
というのも、この実験では、もうひとつ興味深いことを示唆しているのです。
同じように白衣を着てもらったにもかかわらず、「そのコートは芸術家用のコートだ」と伝えられたグループは、平均以上の成績を収められなかったそうです。つまり、服を着ただけでは効果はなく、人々が服に対して抱く象徴的なイメージがあるか否かが重要であると示されたのです。
白衣を着用して、何も言われなければ、きっと多くの人が医者や先生をイメージするでしょう。そのため白衣の着用で、「なんだか自分は賢くなった気がする」と思い込む。半面、水を差すように、「それは芸術家のコートです」と伝えると、思い込みが薄れ、結果が伴わなくなってしまう──。この結果を受け、アダムらは「姿勢や服装は、それらに紐づく象徴的なイメージを同時に組み合わせることが重要である」と述べています。
たとえば、アメカジファッションに身を包んだ場合、アメカジに対するあこがれや知識、イメージがある人が着用すると効果的と言えますが、「なんかはやっているから」となんとなく着ている人は、“豚に真珠”になりかねないのです。
自分の好きな服を着ることは、自分にとってどのような効果を授けるか分かっているからモチベーションが上がるのです。同様に、もしあなたが制服を着るような職業の場合、そのユニホームがあこがれにつながるような人物や映画などを想像すると、モチベーションアップになるかもしれません。
スーツを着るなら、「スーツを着る=聡明」というイメージを持つことが大事なのです。
◆本コラム待望の書籍化!
「『不安』があなたを強くする 逆説のストレス対処法」
堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円)
科学が証明!ストレス解消法