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侮れないアメリカの若者の「エコ不安」…将来の少子化にも影響する

21日に起きたカナダ西部ブリティッシュコロンビア州近郊の森林火災は過去最悪に。3万世帯に避難命令(Nikki Goyerのソーシャルメディアの動画から)
21日に起きたカナダ西部ブリティッシュコロンビア州近郊の森林火災は過去最悪に。3万世帯に避難命令(Nikki Goyerのソーシャルメディアの動画から)/(C)ロイター=共同

 2019年このコラムで、アメリカではエコ不安神経症を病む若者が出てきていると書きました。

 あれから4年、温暖化は大気や海水の異常高温や山火事という形で、今や温暖化ではなく「沸騰化」と言われるまでになりました。

 そしてエコ不安を訴える人も劇的に増えました。特に若いZ世代の半数近くが、「エコ不安が毎日の生活に影響している」と答え、4割が「将来子供を持つことをためらう」とまで言っています。

 こうした不安が極端なレベルになると、睡眠や仕事をすることさえ難しくなります。また不安や悲しみだけでなく、充分な環境対策をして来なかった大人に、裏切られたという気失望感、また政府への怒りという形でも現れ、若者の活発な社会活動につながっています。

 一方で、私が知る限りなので間違っているかもしれませんが、日本の若者はそこまで強い不安を感じていないようにも見えます。

 もしかすると報道や情報の量が理由かもしれません。アメリカでは異常高温のニュースには必ず温暖化が繰り返し強調されているのに比べ、日本の報道はそこまででないような気がします。

 あるいはタイム誌に寄稿した気候心理学者のスーザン・クレイトン教授が言うことが当たっているのかもしれません。

「人はネガティブな感情を抱くことを嫌うため、問題があることを否定したり、それについて考えることを避けたり、すべてがうまくいくという非現実的な楽観主義を維持しようとする」

 いわゆる臭いものに蓋をしている状態です。

 しかし同教授は、「これらの感情に対処するのは難しいが、それを受け入れるべき」とし、「もし逆に自分がそれを否定したまま、友人や家族、さらには政治家や業界のリーダーたちに対し、こうした不安を訴えなければ、結果として何も問題はないということになってしまう」と警告。逆に「こうしたネガティブな感情はポジティブな感情、希望とも共存できる。悲しみや不安がなければ、私たちは変わろうという気にはならないし、希望がなければ変化が可能だとは思わないだろう」とまとめています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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