今回は、在宅医療に関心を持つ患者さんやご家族から受ける質問で、よくあるものを紹介しましょう。
【病院での療養と比べて、在宅のほうが勝っていると思うことはなんですか?】
何を良しとするかは人それぞれですので、明確な答えはないのですが、私が伝えるのは「慣れ親しんだ自宅で適切な医療を受けられることに加え、1日24時間、患者さんにとって快適なペースで療養生活を送れます。起床・就寝時間、何時に何を食べるか……。すべて自由です」。
【在宅医療ではどの程度の医療サービスを受けられるのですか?/どんな病気に対処してくれるのですか?】
診療内容は、在宅医療を行う医療機関によって異なります。当院の場合、がんの在宅ケア、入退院を繰り返すような慢性心不全や認知症を含む精神科疾患の診療などが多いです。点滴や輸血、重度の床ずれの処置も行いますから、ほぼ病院と変わらぬ医療を提供できることをお伝えしています。
自宅で受けられる医療は限られている──といった先入観があるからか、私やスタッフの説明に驚き、安堵する方も珍しくありません。
【サービスの利用条件や費用に関して教えてください】
在宅医療は基本的に、通院困難だと医師に判断された場合に利用が可能となります。
費用については、診療内容や回数によって異なりますが、いずれにしても医療保険が適用されます。当院の患者さんには、生活保護を受けている方や、ご家族が誰もおらず経済的に不安を抱えている高齢者の方などもいます。
【在宅医療を始めるにはどうすればいいのですか?】
病院や地域包括支援センターに、在宅医療について相談すると、在宅医療機関を紹介してくれます。そこに電話をかけるところから始まります。在宅医療の利用希望を医療機関に伝え、家族やケアマネジャーとの相談は可能か、病状、治療経過などの質問に回答。その後、サービス利用対象となれば、初回訪問日を医療機関と決めます。
初訪問までに、患者さんやご家族の疑問点、不安点などを挙げておくといいでしょう。もちろん在宅医療がスタートしてからでも質問は随時していただいて構わないのですが、病状によっては、在宅での療養期間は限られたものかもしれません。心地よく過ごせる時間を少しでも長くするために、早い段階で、遠慮なく医師やスタッフに希望を伝えてほしいと思います。
【忙しい中、質問ばかりして、気を悪くされたりしませんか?】
頂いた質問の中には患者さんやご家族が抱えている不安を解決するためのヒントが隠れていることがしばしば。ですから、質問は大歓迎です。
訪問時に医師やスタッフが把握した患者さんの容体やご家族の思いなどは、診療所に持ち帰り、スタッフ間で綿密に共有します。この情報の共有は、誰が訪問しても適切に対応できるために重要な作業だと考えています。