マンハッタンの街角では、この春からオレンジ色のボックス「スマート・コンポスト」が目に付き始めました。
コンポストは家庭から出る生ごみなどの有機物を分解して作る堆肥のこと。ニューヨーク市内では、このコンポストへの関心が今飛躍的に高まっています。
なぜなら、生ごみから出る温室効果ガスが、地球温暖化の大きな原因となっているからです。ごみ廃棄場から発生するメタンガスはもちろん、燃やして処理する時の煙も含め、全世界で排出される温室効果ガスの10%を占めるという数字もあるほどです。
しかし、コンポストすることで生ごみは堆肥として再利用できます。
そこで、ニューヨーク市では市民の健康を守るために、気候変動に対する取り組みの一環として、コンポスト・ゴミの収集を順次スタートしています。2025年までには市内全域で分別を義務化する予定です。
それに先駆けて設置されたのが、市内に200箇所あるスマート・コンポストです。
「スマート・コンポスト」を使うには、まず無料のアプリをダウンロード。最寄りのコンポスト・ボックスに行き、やはりアプリで解錠して捨てるだけ。箱の上部にはソーラーパネルが搭載され、必要な電力を賄っています。私も最近使い始めましたが、ゲーム感覚でとても簡単。これなら続けられそうです。
捨てられたゴミは夜の間に市の清掃局員が収集していますが、では一体どこでどう処理されるのでしょうか。
多くの市民から出る大量の生ごみを、コンポストする土地が果たしてあるのか? と不思議に思って調べたところ、ブルックリンの再開発地域に処理場があることがわかりました。ここでは「エッグ」と呼ばれる銀色の巨大な金属タンク内で、生ごみはコンポストとメタンガスに分解され、それぞれ再利用されるそうです。
ちょっと待って。再び温室効果ガス排出の原因になるメタンをなぜわざわざ作るの? という疑問に対し、ただゴミ処理場で腐っていくよりはずっと建設的、というのが市当局のコメントでした。気候変動と戦うには、こういう割り切った考えも必要かもしれません。
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