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イスラエル対ハマスの戦争が世界的メンタルヘルス危機を招く

パレスチナ自治区ガザの破壊された自宅から南部へ避難する住民ら(C)ゲッティ=共同
パレスチナ自治区ガザの破壊された自宅から南部へ避難する住民ら(C)ゲッティ=共同

 イスラエルとハマスの戦争が続き、多くの命が失われる痛ましいニュースが続いています。そんな中これは当事者だけの問題ではなく、世界的な公衆衛生の危機という専門家の声が注目されています。

 世界の紛争地域では、多くの人が食料や水の供給を絶たれています。運よく避難できたとしても、慣れない場所での生活で、深刻な体と心の健康リスクにさらされることになります。

 カタールから世界に発信するテレビ局アルジャジーラは、ガザ地区の子供たちのメンタルヘルスを危惧しています。彼らはイスラエルによる封鎖地区で生まれ、貧困と暴力の中で育ちました。今回の戦闘でその状況はさらに悪化すると懸念されています。

 ニューヨークに目を移すと、市民の18%にあたる180万人はユダヤ人。パレスチナ人は3万人が暮らしています。戦地にいる家族・親戚の状況に関する彼らの不安や恐れは、日に日に高まっています。

 影響はここにとどまりません。

 3大ネットワークABCニュースによれば、戦争体験を実際にしてなくても、目撃しただけでもPTSD(心的外傷後ストレス障害)のような症状が出ることがあるといいます。

 特にSNSが普及した今、かつてなかったほどの情報や映像・画像が猛スピードで広まっています。これを繰り返し見続けることも、PTSDの原因になりうるというのです。

 このスピードは人々の反応にも影響しています。イスラエルとハマスの紛争を受けて、ニューヨークの大学ではいち早く、イスラエルの報復に対する抗議デモが起こりました。

 またこれを書いている時点でも、ハマスがニューヨークのパレスチナ人に対し、13日(金)に抗議行動を起こすよう呼びかけています。親イスラエル派との万が一の衝突を懸念して、多くの学校は休校になり、リモート勤務を許可する会社もあります。こうした状況への市民の不安も、メンタルへの悪影響と言わざるをえません。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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