腰・膝・足首が痛い人は…股関節の「硬さ」を要チェックするべし

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写真A(C)日刊ゲンダイ

「股関節ほぐし」という名のストレッチが、SNSに盛んにアップされている。ジムに行けば「股関節が硬くなっていませんか?」という声がけもある。股関節が硬いと支障があるのか。世田谷人工関節・脊椎クリニック(東京・世田谷)の人工関節センター長である塗山正宏医師に話を聞いた。

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 股関節は脚の付け根にある大きな関節で、胴体と脚をつなぐ重要な役割を担っている。大腿骨の丸い頭の部分(大腿骨頭)が、骨盤の受け皿の部分(寛骨臼)にはまり込んでいるという形状だ。

「股関節に関わる筋肉は20個以上。これらが作用して、脚を開いたり、曲げたり伸ばしたりなどの動きがスムーズにできるようになっています」(塗山医師=以下同)

 股関節が滑らかに動くから、私たちは健やかに歩いたり、痛みなしに運動できる。ところが、体が硬い人がいるのと同様に、もともと股関節が硬い人がいる。加えて、年齢とともに股関節はどうしても硬くなっていく。人が立ったり歩いたりするときに、体重を支えてくれるのが股関節。そのため、歩行時には体重の約3倍、立ち上がる際には6~7倍の重さが股関節にかかるといわれている。

「股関節が硬くなると、背骨や腰の柔軟性や、膝に影響し、放置していると、腰、膝、足首に痛みが生じ始めます。さらには、変形性股関節症や変形性膝関節症に至る方もいます。また、片方の股関節が硬くなり、それをかばおうと、もう一方の股関節と膝に負荷がかかり、痛みが生じることもあります」

 追い打ちをかけるのが、肥満、重労働、激しいスポーツ。一層股関節に負荷をかけ、故障のリスクを高める。股関節、そして腰、膝、足首に痛みが出る前に股関節の柔軟性を高めたい。次の項目に1つでも該当する人は、股関節が硬くなり始めていると考えた方がいい。

・靴下や靴をはくときに、以前よりかがみにくくなったり、はきづらくなったと感じる。
・以前よりあぐらをかきにくくなった。
・椅子に座って足を胸に引き寄せると、引き寄せづらいと感じる。
・立って、片方の足を横に開く。ほとんど横に開かない人は要注意。鏡の前でやってみるのがわかりやすい。開いているつもりでも、鏡で見るとほとんど開いていないことがある。

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写真B(C)日刊ゲンダイ
股関節を柔軟に保つことが大切

「股関節は少しずつ硬くなっていき、最初のうちは痛みなどがありません。上記のチェックで左右差がある人も注意が必要。片方はスムーズに動くが、片方は開きにくい、動かしにくい、違和感があるという場合です。股関節の変形が始まっている可能性があります」

 歩く際に体の中心にあるのが、股関節。硬くなり可動域が狭くなると、一歩一歩の歩幅が狭くなり、歩行スピードが落ちる。階段の上り下りがスムーズにいかなくなり、痛みを伴うこともある。

「高齢者では歩くことがおっくうになり、結果、フレイルにつながってしまいます。また、変形性股関節症が進行すると、手術が必要となります」

 股関節の柔軟性を高め、可動域を広げるには、ストレッチが有効だ。塗山医師が勧める方法は次の通り。

【片膝をついて「屈曲」と「伸展」(写真A)】

 右膝を深く折り曲げ、左足のつま先を床につけて、左膝も床につけるようにゆっくり腰を落として15~30秒キープ。このとき腰が前かがみにならないよう気を付ける。両手はもも上に置く。反対側も同様に行う。

【お尻を後ろに引き、「屈曲」と「外旋」(写真B)】

①四つん這いの姿勢になる。このとき、両膝の幅は広めに。

②お尻を後ろに引いていき、元の姿勢に戻る。この繰り返しで30秒間続ける。

 簡単な動きなので、硬く固まった股関節になる前に日課にしてほぐしたいものだ。

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