痔ろうがきっかけで糖尿病が発覚も…「減量手術で人生を取り戻した」

タクシー乗務員のわいだきよしさん
タクシー乗務員のわいだきよしさん(提供写真)
わいだきよしさん(53歳/タクシー乗務員)

 私が糖尿病だと知ったキッカケは痔ろうの手術です。タクシーの乗務員は一日中座りっぱなしで、痔ろう持ちが少なくありません。私もその一人でした。限界まで我慢したのですが、たまらず今から14年前に手術しました。ところが痔ろうの先輩と比べて治りが遅い。医師から「血糖値が高い。糖尿病だね。その治療が必要だ」と言われました。

 172センチの私の当時の体重は92キロ。医師に告げられたHbA1cは9%を超えていました。高い数値ですが人によっては深刻な数字だと思わないかもしれません。

 しかし、私は恐怖に震えました。私の父が重度の糖尿病で、その悲惨な闘病の記憶が蘇ったからです。腎機能が悪化した父は透析を始めた後に片足を切断。苦しみながら亡くなりました。

 悪化した血糖値を突きつけられた私は「いよいよ私の番か」と恐ろしくなりました。すぐその足でフィットネスクラブに入会。暇さえあればトレーニングに励み、1カ月ほどで10キロ減量しました。HbA1cも6%台に改善しました。

 ところがそれで安心して、再び食欲の赴くままに暴飲暴食。カレーなどは飲むように食べました。その結果、リバウンドして体重が増え、血糖値も悪化。このままではいけないと思い、ネットでやせ薬を探し、自由診療の医療機関で2型糖尿病の薬をそれとは知らずに8万円で購入しました。

 この薬は当初、非常に良く効き、体重は落ちました。しかし、血糖値は下がらず、徐々に上がっていきました。その後自分で探して、四谷メディカルキューブの門を叩きました。

 私が希望したのは胃カメラを使って胃の中にバルーン(風船)を留置する「内視鏡下調節性バルーン留置術」と呼ばれる手術でした。開腹なしの体の負担の軽いやり方なので良いなあ、と思いましたが、最終的には根治を目指して「腹腔鏡下スリーブバイパス術」と呼ばれる手術を受けました。

 治療費が240万円ほどかかると聞いてあきらめかけましたが、たまたま治験に参加できることになり、費用的な問題はクリアとなりました。

 4泊5日の手術で胃は100㏄までに縮小し、小腸とバイパスでつながりました。以降はほんの少し食べただけで満腹になりました。手術前の体重83.2キロ、空腹時血糖181㎎/デシリットル、HbA1c9.2%でしたが、手術1カ月後には体重は69キロ、HbA1cは6.4%となりました。

 その後、糖尿病では不可だった白内障手術が可能になり、インプラントも検討できるようになりました。夜中にトイレに立つ回数が減り、無呼吸症候群の程度も良くなりました。服のサイズは3LからMにダウン。洋服もすべて買い替えました。何より、周りから「別人」と驚かれるのは何とも言えぬ喜びです。

 手術後1年目の健診で、体重が65.9キロ、HbA1c5.3%でした。手術をやって良かった、人生を取り戻した、手術して1年半経過した今、心からそう思うのです。

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