健康長寿に役立つ高齢薬膳

【小松菜】「血」をたっぷりと補う働きで肌の健康維持に威力発揮

小松菜とアナゴのバルサミコしょうゆ和え
小松菜とアナゴのバルサミコしょうゆ和え(提供写真)

 最近、手がカサカサして、ひび割れも。水に触れると痛い……。この時季、「手荒れ」に困っていませんか?

 手荒れとは、皮膚のバリアー機能が低下したことによって引き起こされる「手湿疹」と呼ばれる皮膚炎です。手は皮脂腺がなく、角化が強いため乾燥しがち。そのため、空気の乾燥、気温の低下、水仕事などによって皮脂や角質が減った状態になると生じやすくなります。

 洗剤、せっけん、ゴム手袋などによる刺激やアレルギーが原因となることが多く、皮膚が乾燥して硬くなったり、ささくれ、ひび割れが現れます。悪化すると、ひび割れからの出血、炎症による腫れや赤み、水疱やジクジクした湿疹が生じて痛みやかゆみが生じる場合もあります。

 とくにコロナ禍以降、過度な手洗いによって、手荒れが起きやすい状況にあります。アルコール消毒も、手の水分がアルコールと一緒に気化するため、乾燥を加速させます。

 シニアの場合、加齢によって皮膚の水分や皮脂が減り、バリアー機能が損なわれているため、手荒れが悪化しやすくなります。放置しておくと難治性の手湿疹に移行する恐れがあるため、注意が必要です。

 手荒れは、仕事や日常生活に支障を来すうえ、バリアー機能の低下によって、ウイルスや菌が侵入しやすくなり、感染リスクが高まる可能性もあります。たかが手荒れと思わずに、クリームなどによるこまめな保湿を行うとともに、食事でもケアをすることが大切です。

 中医学では、手荒れは「血」との関係が深いと考えます。血は、全身に流れて体のすみずみにまで栄養を与える液体。五臓六腑や、筋肉、骨を養って生理機能を正常に保ち、皮膚を滋養しています。血が不足すると、皮脂の分泌が滞り、乾燥して肌荒れを引き起こしやすくなるのです。

 とくに、もともと血が不足しているタイプの人は、手荒れに悩まされがちです。普段から、めまいや立ちくらみ、動悸(どうき)や息切れ、目が疲れやすいといった不調がある人は、血が足りていない傾向があります。血を増やす食養生に努めましょう。

 おすすめは、いまが旬の小松菜。血を速やかにたっぷりと補う働きがあり、肌の健康維持に威力を発揮します。風邪予防にも役立ち、これからの季節に、ぜひ積極的に取り入れたい食材です。

 また、寒さが厳しくなる冬は、とりわけ体に栄養をため込んでおきたい季節です。血をしっかり増やすことは冬の体調維持にも大きく役立ちます。おひたし、味噌汁や鍋ものの具に利用して、こまめな「小松菜造血」に努めましょう。小松菜の手荒れ予防効果を高めるためには、同じく血を増やす効果のあるアナゴ、カツオ、マグロ、牛肉、黒ごま、ピーナツ、クコの実などと組み合わせるとよいでしょう。

■小松菜高齢薬膳レシピ
小松菜とアナゴのバルサミコしょうゆ和え

 血を増やす働きのある小松菜とアナゴを組み合わせたレシピ。甘酸っぱいバルサミコ酢の風味が、両者をうまくつないでおいしくいただけます。ワインのお供にもぴったり。

【材料】2人分
●小松菜  2分の1把
●煮アナゴ(市販品)  100グラム
●A(オリーブオイル、しょうゆ、バルサミコ酢=各大さじ1、レモン汁=少々)
●クコの実  大さじ2

【作り方】
 小松菜は根元を切ってゆで、冷水にとりザルにあげて水気をしぼり、4センチ程度に切ってボウルに入れる。食べやすく切った煮アナゴ、混ぜ合わせたAも入れて全体を混ぜる。器に盛り、クコの実を散らす。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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