「まだ締め切りまで余裕があるから」と考え、着手するのをずるずる先送りにしてしまう人は多いのではないでしょうか?
イギリスの歴史学者シリル・ノースコート・パーキンソンが、イギリスの官僚の働き方について、観察に基づいて理論化。それを提唱した「パーキンソンの法則」があります。
第1法則は、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」。第2法則は、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」。
たとえば公共事業などで考えた場合、予算枠を使い切るために必要のない道路工事をあえて行い、仕事量を予算枠に合わせて無理やり増やすことが、この法則に当てはまります。人間は仕事の量を増やしようがない状況でも、パーキンソンの法則のように、時間や予算をすべて満たすまで使ってしまいがちだというのです。
パーキンソンの法則については、米国研究所のブライアンとロックらが実証実験(1967年)を行っているのですが、ある作業を行うにあたって被験者たちを次の①~④で比較したそうです。
①2倍の時間を与える場合②最小限の時間を与える場合③自分のペースで行う場合④できるだけ早く遂行するように指示する場合──。
その結果、長い時間を与えると、ゆっくりと作業することが確認されたといいます。①のように倍の時間を与えるという配慮をしても、被験者は「作業時間に余裕ができた」と解釈し、時間をたっぷり使ってしまう。多くの時間を与えたとしても、生産性が向上するとは限らないというわけです。むしろ、時間をすべて使うために合間合間でサボって、与えられた仕事が時間ぴったりに終わるように、無意識とも本能的ともとらえられる「調整」をしてしまう……。人間はキャパシティーを事前に示されると、それに合わせてしまう生き物なのです。あれだけ余裕があったスケジュールにもかかわらず、前倒しで率先して行えないのは、人間の性分とも言えるんですね。
ということは、与えられた仕事の期限がある場合でも、自分で期日を設定し直すことなどで、先送りにするリスクを回避できやすくなります。また、目標を明確にすることで、仕事に対するモチベーションを上げることや、大きな仕事を小さなタスクに分割し、小刻みに仕事を進めるといったことも、効果的な手段となるはずです。与えられた期限に対して、自分なりのアレンジを加えないと、ぎりぎりまで時間に追われてしまうのです。
これは仕事や宿題に限った話ではありません。前述の「パーキンソンの法則」の第2法則では、「お金」に関してもずるずるとアバウトになると示唆されています。
「来月は収入が多いから、今月は多少散財してもいいか」と考えるのも、同じ現象。ですから、ストッパーとなるような目標やマイルールを定めることが大切です。どんなに小さなことでも構いません。ストッパーがないと、ずるずると時間もお金も流れていってしまうのです。
◆本コラム待望の書籍化!
「『不安』があなたを強くする 逆説のストレス対処法」
堀田秀吾著(日刊現代・講談社 900円)
科学が証明!ストレス解消法